1 会議報告です。

2007年10月にイギリスのロンドンで二つの会議がありました。10月18日から20日での、(1)Women Deliver会議
http://www.womendeliver.org/
と23、24日のマリー・ストープス・インターナショナルの(2)Safe Abortion会議に出席してきました。http://www.globalsafeabortion.org/index.html

(1)Women Deliver会議のごく簡単な紹介

Women Deliver会議は、妊産婦の健康促進、妊産婦死亡の削減などを目的に国際社会が決意を新たにする会議でした。妊産婦死亡率は、1987年に妊産婦の安全や健康を推進するSafe Motherhood Initiativeが開始されてからもほとんど下がっておらず、とくにいまだに1分あたり1人(年間53万人)の女性が妊娠・出産を原因として死亡しています。妊娠・出産を原因とする合併症はその何十倍に上ります。国連の統計によると、アフガニスタンでは6人に1人の女性が妊娠・出産を原因として死亡しているのに対して、スウェーデンでは約3万人に1人という、大きな格差があり、妊産婦死亡の大半がいわゆる開発途上国で起きており、しかも低所得国ではこの15年の間に妊産婦死亡率の改善がほとんどなされませんでした。Women Deliver会議では、参加国政府や国際機関が、妊娠・出産を原因として女性が死亡しないよう、政治的意思を新たに表現しました。イギリス政府はこの会議で、国連人口基金に対して1億ポンドの拠出を宣言し、また、JOICFP(家族計画国際協力財団)の調整の成果で日本政府が世界的な保健課題を、日本で来年2008年開催されるG8サミットの主要議題とすることを宣言しました。
http://www.womendeliver.org/media/g8.html

皆さんの中には、妊産婦の健康増進のために何が必要か、やG8サミットの存在意義について、いろいろご意見はあるでしょうし、上記会議では、女性運動や若者からの参加が少なかったことは私としても残念でしたが、妊産婦死亡がなくなることに向けて、少しでも前進があればよいと思っています。

(2)マリー・ストープス・インターナショナルのSafe Abortion会議
この会議は、イギリスでの中絶合法化40周年を記念して、世界に「安全な人工妊娠中絶」を保障する環境を整えることを目指して開催されました。安全でない妊娠中絶は、妊産婦死亡の十数%を占めると推算されており、また、世界の約4分の1の地域で、人工妊娠中絶が厳しく禁止され、中絶した女性が刑罰を科せられています。
日本は、堕胎罪が存在します。母体保護法によって経済的理由を原因とする中絶は合法とされるものの、純粋に女性の意思だけでは中絶が認められず、配偶者の同意さえ原則として必要とされてしまいます。
カトリック教国であるニカラグアでは、昨年、人工妊娠中絶が、妊娠継続が女性の生命を脅かす場合も含めて全面的に中絶を禁止し、処罰の対象とする法律改悪がなされ、既に数十人の女性が犠牲になったとも報じられています。また、安全な中絶が保障されていない国では、富裕層は国外での中絶を利用できることから、その被害は貧困層に集中しがちです。Safe Abortion会議では、そのニカラグア情勢についての報告も多かったです。
また、生きる権利をはじめとして、中絶の禁止や安全な中絶が制度的または事実上保障されていないことは基本的人権の侵害として位置づける発言が多かったです。
『中絶』ということについて、皆さんそれぞれの意見があるでしょうが、悲しみの中で中絶を選んだ女性に国が刑罰をもって臨むことは不要ですし、中絶を安全な環境でできないことは女性の生きる権利、健康の権利を脅かすことになります。

今回の会議の開催によって、安全な妊娠中絶を確立、保障する活動の流れが加速すればと思っています。

なお、両会議の詳細については、別の機会に報告を予定しております。

2 行事の再案内です。「阻止連」25周年。11月4日からしっかりした講座が始まります。

 2週間前にも案内が流れていたと思いますが、開催日が近くなってまいりましたので、案内差し上げます。

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女(わたし)のからだから何が見える?
――優生保護法改悪阻止から25年! 連続講座
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第1回 11月4日(日)

【第1部】 13:30分開始
「私のからだ」から何が見えるか?― 戦前・戦後、そして未来へ
    青木やよひ さん
「フェミ的にいって堕胎罪ってどうなのよ?」
    水島 希 さん
資料代:1000円
【第2部 交流会】17:30〜20:30
会費:2000円(軽食あり、飲み物代別)
会場:(第1部・第2部とも)
   文京区民センター 3C(東京都文京区本郷4−15−14)
   都営三田線大江戸線 春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
   地下鉄丸の内線 後楽園駅から徒歩3分
   JR 中央線 水道橋駅より徒歩10分
<お願い>
• 「第2部 交流会」参加ご希望の方は、準備の都合がありますので、gogo@soshiren.org または 03−3353−4474(ファックス)までご一報お願いします。
当日でも多少お受けできますが、なるべく10月31日までにお申し込みをお願いします。
• 第1部は、申し込み不要です。直接会場にお越しください。


 2007年1月、柳沢厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言に各層の女たちから批判が続出しました。このことは、妊娠・出産も育児も困難な現実の一方で、「産む・産まないは女(わたし)が決める」という考え方は広く共有されていることを明らかにしたと言えるのかもしれません。

 今から25年前の1982年に、優生保護法という法律の変更が国会で議論されました。その名のとおり、優生=「人口の質」を向上させることを目的とするとともに、刑法堕胎罪とセットになって、女が子どもを産むか、産まないかを管理しようとする法律です。優生思想を強化し、中絶を禁止する法改悪だと反対して声をあげた私たちのグループは、「女(わたし)のからだは、わたしのもの」という視点から、その後もいろいろな問題に取り組んできました。

 96年に優生保護法母体保護法に変わりましたが、優生思想は消えたでしょうか。女(わたし)たちが自由に生きられるように変わってきたのでしょうか。「女(わたし)が決める」状況になってきたのでしょうか。

 少子化が進み、産婦人科が減り、その一方で、不妊クリニックは増え、そこでは体外受精などの生殖補助技術が一般化しています。卵を体外に取り出したことで、卵や胚を材料として利用する技術も進んできました。また中絶胎児も材料として期待されています。

 25年前の<過去>の経験や思いと、<現在>のそれとをつないでいく、違う経験をしてきた人たちが、それぞれの思想や気持ちを共有していく。そんなことをめざして、連続講座をはじめます。




第2回

【12月13日(木)】 午後6時半〜
優生保護法と障害者の自立・介助」
            スピーカー:青海恵子さん・瀬山紀子さん
ビデオ「そして どう生きる」上映

会場:女性と仕事の未来館 第2セミナー室
   JR田町駅三田口(西口)から徒歩3分
   地下鉄(都営浅草線都営三田線三田駅
   A1出口から徒歩1分