特別報告者によるあらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健

United Nations A/66/254
General Assembly Distr.: General 3 August 2011 Original: English 11-44358 (E) 220811 *1144358*
Sixty-sixth session
Item 69 (b) of the provisional agenda*
Promotion and protection of human rights: human rights questions, including alternative approaches for improving the effective enjoyment of human rights and fundamental freedoms
Right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health

国連総会 A/66/254

あらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健康を享受する権利

事務総長による注記

事務総長は国連人権理事会の決議15/22と6/29にしたがい、あらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健康を享受する権利についての人権理事会特別報告者、アナンド・グローバー(Anand Grover)が準備した中間報告書を送出すせることを誇りに思います。

特別報告者によるあらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健康を享受する権利についての中間報告書

要旨

この報告書では、「あらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健康を享受する権利についての特別報告者」は、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性や生殖に関する健康)に関する刑法等の法的規制と健康への権利の相互関係について考察しています。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスへの権利は、健康への権利にとって不可欠です。したがって政府は健康への権利のなかでのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスへの権利を確実に充分に実現する義務があります。

特別報告者は人工妊娠中絶、妊娠中の行動、避妊と家族計画、性や生殖についての教育や情報提供についての刑法やその他の法的規制の影響を考慮しています。しばしば差別的な性質を持つこれらの分野における刑法その他の法的規制は、質の高い物品、サービス、情報へのアクセスを制限することによって健康への権利を侵害します。これらの法的規制は、個人が健康への権利のもとで与えられている自由、特に意思決定や身体的な統合性(bodily integrity)を制限することによって人間としての尊厳を冒します。さらにある特定の公衆衛生上の成果を上げることを目的とするそれらの法律の適用は、効果的でなく、影響が偏っていることが多いです。

健康への権利の実現のためには、健康に関する課題について個人が意思決定をする際に妨げとなる障壁、そして医療、教育、情報へのアクセス、そして特に女性や少女だけに影響を与える健康状態への医療、教育、情報へのアクセスの妨げとなる障壁をなくすことが必要です。障壁が刑法やその他の法的制限により作られている場合には、政府はその障壁を取り除く義務があります。そのような法律や法的制限の撤廃は、資源の制限を実現できないことの口実とできるものではなく、そのため漸進的な実現しか求められていないとは解釈されるべきではありません。性や生殖の健康に影響を与える刑法やその他の法律や政策によって生じる障壁は、健康への権利を充分に享受できるようにするために即座に撤廃されるべきです。

内容

I. はじめに
II. 背景
III. 国際人権法と性と生殖に関する健康への権利(the right to sexual and reproductive health)
IV. 性と生殖に関する健康への権利に影響を与える刑法と法的規制
V. 勧告


I. はじめに

1. 特別報告者は、前回の総会(A/65/225)での報告以降、2010年11月にシリアアラブ共和国(A/HRC/17/25/Add.3)、2011年3月にガーナに派遣されました。特別報告者は健康と発展への権利に関する報告書(A/HRC/17/25)や、薬へのアクセスが健康への権利にとって不可欠な要素であることについての専門家会議に関する報告書(A/HRC/17/43)を2011年6月に開催された国連人権理事会第17回会期において提出しました。特別報告者は2011年4月に高齢者の健康への権利についての専門家会議を招集し公の協議を行いました。この協議をもとに2011年9月の人権理事会18回会期において報告書が提出されています。
2. 特別報告者は、2011年3月にニューヨークで行われた「Open Society Institute」財団と国連HIV/AIDSに関する共同プログラムが主催した、世界エイズ結核マラリア対策基金(いわゆる世界基金)会議、ブダペストにある中央ヨーロッパ大学が開催した健康への権利の実施に関する会議等の、健康への権利についての数々の会合や会議に貢献しています。特別報告者は2010年9月に北アイルランド議会においてミレニアム開発目標についての基調講演を行い、2011年5月にロンドンで行われた国際薬物政策合同セミナーでは、麻薬犯罪への量刑手続の均衡について基調講演を行いました。
3. 特別報告者は以下の場所で地域市民社会協議を開催しました。(東アフリカの会合をナイロビにて、東欧の会合をブダペストにて、ロシア連邦中央アジアをモスクワにて)協議を通して特別報告者はこれらの地域における健康への権利の実現に関する情報を収集でき、任務に関する情報を広めることができました。

II. 背景

4. この報告書は、特に女性に関連する性や生殖に関する特定のサービスの犯罪化と、このサービスの犯罪化があらゆる人が達成可能な最高水準の身体的、精神的健康を享受する権利(以後「健康への権利」と記載する)に与える影響を考察しています。この報告書は性や生殖に関する健康についての行動や意思決定に影響を及ぼす他の法的制限や政策についても論じています。報告書は人工妊娠中絶、妊娠中の行動、性や生殖に関する教育、避妊や家族計画を規制するために、法律やその他の法的制限がいかに用いられているかを検証しています。報告書はそのような刑法やその他の法的規制が物品、サービス、情報へのアクセスを含む医療に与えかねない悪影響、そこに関わる人、特に女性の自由や尊厳に与えかねない悪影響、公衆衛生に与えかねない悪影響についても議論しています。
5. 特別報告者は性や生殖に関する健康への権利はさまざまな刑法や法的規制を通して国によって行動や意思決定が規制され、そのことにより健康への権利が侵害される可能性がある領域であることを考慮して、これらの問題に取り組むことを決定しました。

III. 国際人権法と性と生殖に関する健康

6. 性や生殖に関する健康への権利は、健康への権利に不可欠な要素です。国連・社会権規約は、12条2(a)において性や生殖に関する健康への権利の側面を強調しています。国連・社会権規約委員会の一般的意見第14号は、健康への権利は子どもと妊産婦の健康、性と生殖に関する保健サービス(家族計画、産前及び産後のケア)、緊急の産科医療並びに、情報及びその情報に基づいて行動するために必要な資源を改善するための措置を含むと述べています(E/C.2/2000/4、第14項)。さらにこの一般的意見第14号は、女性の健康への権利の実現には、性と生殖に関する健康の分野を含め、保健サービス、教育及び情報へのアクセスを妨げるあらゆる障害を除去することが必要であると述べています(同上、第21項)。同委員会からの勧告は、一貫してこの姿勢を支持してきています〔注1〕。
7. 国連・女性差別撤廃条約は、女性に幅広い領域、とりわけ教育、雇用、医療へのアクセス平等が保障するための措置を政府に求めています〔注2〕。同条約は、社会的機能としての母性への理解、家族計画の情報へのアクセス、婚姻や家族関係における女性への差別の撤廃を規定しています。また、第16条1(e)は、女性が産む子どもの数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利を与えることを命じています。
8. 国連・子どもの権利条約は、18歳未満の若者に健康への権利の保護を与えています。子どもの権利条約第24条は、国連・社会権規約に定められている健康への権利を認めています。このことは若い女性や男性の人生における性や生殖に関する健康の重要性を考慮すると特に今日的な意義がありますです〔注3〕。この条約は国が母親に対して産前及び産後のケアを保障し、家族計画に関する教育を開発し、「児童の健康を害するような」伝統的な慣行を廃止することを促しています〔注4〕。
9. リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(reproductive health rights)は、1994年の国際人口開発会議における行動計画、北京行動綱領、ミレニアム開発目標の中心となっています。これらの国際合意は、差別や強制や暴力を受けることなく自身の健康の全側面をコントロールし、身体の自律や統合性を尊重し、セクシュアリティや生殖に関する事柄を自由に決めることができる女性の権利を認めています。北京行動綱領は、政府が性や生殖に関する健康を阻害する罰則を廃止すべきと述べています。女性の性や生殖に関する健康の改善と貧困の削減の関係が特に強調されています。残念ながらミレニアム開発目標2010年報告は、思春期の妊娠や避妊(薬)具の使用といったいくつかの指標となる領域において前進が遅れており、2000年から2008年にかけて健康への援助全体における割合の中で家族計画への援助が急激に後退している地域があると述べています〔注5〕。
10. 国連・社会権委員会の一般的意見第14号は、リプロダクティブ・ヘルスについて、女性と男性が子どもを持つかどうか及びいつ子どもを持つかについて決定する自由、自らの選択による安全で、効果的で、支払可能かつ受け入れられる家族計画の手法について情報を与えられ、またそれに対するアクセスを持つ権利、並びに、女性が安全に妊娠・出産期を経過できるようにするような、適切な医療サービスへのアクセスの権利と説明しています(E/C.12/2000/4、脚注12)。性的健康(sexual health)は、「セクシュアリティに関して単なる疾病や機能障害や欠陥がないというだけではなく身体的、心理的、精神的、社会的に満足できる状態」とされています〔注6〕。国際人口開発会議の行動計画は、性的健康には満足できる安全な性生活といつどのくらいの間隔で子どもを持つかを決定する自由が含まれるとしました(A/CONF.171/13、7.2)。また行動計画は、性的健康はセクシュアリティや性的関係に対する前向きで敬意ある取り組みを必要とし、強制や差別や暴力なしに心地よく安全な性的経験を持つ可能性を必須とするとしています。

IV. 性と生殖に関する健康への権利に影響を与える刑法と法的規制

11. 刑法は個人や複数の個人、あるいは社会にとって脅威的であるか危険である、あるいは害があると見なされる行為を規制するために国家により施行されます。これらの法律は、国の刑罰を与えるという権力の最も強い表現であり、国家が行う行為の中で最も意図的な行為です。刑法は禁止される行為を行う人びとを罰します。刑法には人びとが禁止される行為を行うのを抑止したり、犯罪者の活動能力を奪い、更正させ、被害者に補償を提供したりする目的もあります。
12. 強制不妊手術、強制中絶、強制避妊、強制妊娠といったような事案では、国家や国家以外の主体によって行われる明らかな身体的強制は、国家公認の不当な強制であり、健康への権利の侵害であると見なされてきました〔注7〕。同様に、刑法が性や生殖の健康への権利についての個人の行為や意思決定を規制する国家の道具として用いられる場合、国家は個人の意思を強制的に国家の意思に置き換えます。
13. 国はまた性や生殖に関する医療や物品、情報へのアクセスや利用を規制したり禁止したりするために民法行政法を含め、他の法的規制を用います。
14. 刑法や他の法的規制を施行する場合、避妊方法といった性や生殖に関する特定の医療品の利用を妨げたり、ある特定のサービスを直接非合法としたり、全校的な教育プログラム等を通した性や生殖に関する情報提供を禁止したりする可能性があります。これらの法律が施行されると、次のようなさまざまな人に影響を及ぼします。(中絶を行おうとする女性、避妊を必要とする女性、中絶を利用する女性を援助する友人や家族、中絶サービスを提供する医療者等、性教育を行う教師、避妊薬を供給する薬局、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの人権擁護者、同意にもとづく性行為への避妊の利用を求める思春期の若者。
15. 性や生殖に関する健康への刑法やその他の法的規制は、人の尊厳を損なうことを含めていろんな形で健康への権利に悪影響を及ぼす可能性があります。尊厳を尊重することは、あらゆる人権の実現にとって根本的なものです。尊厳には個人が特に性や生殖に関する健康といった重要で親密な領域において、政府の干渉を受けずに自分の決定を自由に行うことが含まれます。
16. 性や生殖に関する健康に影響を及ぼす刑法やその他の法的制限は、健康への権利の侵害になる可能性があります。この報告書はこのような法律や法的制限が女性や少女に与える影響を主に扱っていますが、決して男性や少年が直面する同様の問題を軽視しているわけではありません。しかし性的活動、受精、妊娠を経て親となるという生殖の生理機能と、ジェンダー化された社会的、法的、経済的状況の中で、女性は概して性や生殖に関する健康への権利を侵害されやすい立場におかれています〔注8〕。社会や家庭における女性の役割に対する根強い固定概念は、社会的な規範を作り、強化します。このような規範の多くは、女性の自由、特に性的アイデンティティに関する女性の自由は抑えられ規制されるべきであるとする信念に基づいています(E/CN.4/2002/83,para.99を参照のこと)。女性が固定観念に基づく規範に背く場合、女性たちはしばしば厳しく罰せられます〔注6〕。その結果、健康に悪影響を与え健康への権利の侵害することがしばしばです。この報告書で検討した刑法やその他の法的規制は、女性が望まない妊娠、計画外の妊娠を継続するよう女性に強制することで、国家による女性の人生のコントロールを促し正当化しています。
17. ジェンダーステレオタイプ化と女性や少女への差別や周縁化、性や生殖に関する健康の享受の因果関係については広く確認(文書化)されてきています(E/CN.4/2002/83及びE/CN.4/2004/49を参照のこと)。犯罪化は、社会的烙印を生み出し、差別を助長します。犯罪化は利用できる性や生殖に関する医療品、サービス、情報を充分に利用することを制限させ、社会への充分な参加を拒絶します。また犯罪化は医療関係者の見方を歪め、そのことは女性が医療を利用する妨げとなったりします。刑法やその他の法的規制は女性の力を削いでしまい、法的責任を問われるのを避けるため、あるいは差別を恐れて健康を守るための手筈を取るのを思いとどまらせてしまうことがあります。性や生殖に関する医療品、医療サービス、情報へのアクセスを制限することにより、これらの法律はそのような援助を必要とする人びと、すなわち女性に過度に影響を与えるという点で差別的な効果を持ちえます。その結果、女性と少女たちはこれらの法律に従う場合には身体的、精神的健康を害することにより罰され、遵守しない場合は投獄されることになります。
18. 政府が性や生殖に関する健康への権利に関する刑法やその他制限的な法律を実施する理由としてもっともよく挙げるのが、公衆衛生と公衆道徳です。公衆道徳は性や生殖に関する行動や意思決定を規制しようと意図されるものも含めて、結果として人権の侵害につながる法律の制定や施行を正当化する理由にはなりません。特定の健康上の成果を出すことは政府のもっともな目的ですが、この目的を達成するために用いられる措置は証拠に基づき人権の尊重を保障するにふさわしいものでなければなりません。公衆衛生上の規制から用いられる刑法やその他法的制限が証拠に基づくものでない場合、あるいはふさわしいものではない場合、政府は性や生殖に関する健康を規制するためにそのような制限を控えるべきです。というのもその規制により影響を受ける個人の健康への権利を侵害するだけでなく、国家の公衆衛生面からの正当化にも矛盾するからです。
19. 女性の権利の保障は両性の健康上の成果を向上させるために非常に重要です。しかし生殖や性に関する健康問題の報告が実際よりも低い状態であるのは深刻な課題で、さまざまな政治的、社会的、文化的理由がその背景にあります。開かれた情報やデータ収集の交換に対する萎縮効果により、犯罪化することは重要な健康の指標の報告に関して、その報告数をさらに実際の数より少なくしてしまうことでしょう。その結果芳しくない健康の結果について効果的に対処することが不可能となり、中核となる開発目標を達成するにあたって国際社会が直面する困難はよりいっそう深まるでしょう。さらに開発指標は定量化できる公衆衛生のデータのみに対処しており尊厳や自律の剥奪は含まれていないため、指標では犯罪化がもたらすものを完全につかみきることはできません。
20. 性や生殖に関する健康を規制するために国家が用いる刑法やその他の法的制限は、その法的制限により影響を受ける人の健康への権利の重大な侵害に相当するかもしれず、公衆衛生の介入として効果があまりありません。これらの法律は即座に再考されるべきです。これらの法律の撤廃は段階的に実施する種類のものではありません。というのも撤廃に伴い資源の負担がかからず、仮にかかるとしても僅かな額だからです。

性と生殖に関する健康への権利に影響を与える刑法と法的規制

1. 中絶の犯罪化と中絶に関するその他の法的規制

21. 人工妊娠中絶を罰し制限する刑法は、女性の健康への権利の実現に対する許容し難い障壁の系列的な例であり、撤廃されなければなりません。これらの法律は性や生殖に関する健康に関して女性が意思決定を行うことを厳しく制限することにより女性の尊厳や自立を侵害します。さらにこのような法律は刑事司法制度に女性が放り込まれる危険をもたらすだけでなく、女性にとって芳しくない健康上の結果を常に生じさせ、防ぐことができた死亡や疾病、体調不良を引き起こし、精神的な健康にも悪影響を及ぼします。中絶に関する刑法を作ったり維持したりすることは、政府が健康への権利を尊重し、守り、実現する義務の違反にあたる可能性があります。
22. 国連・女性差別撤廃委員会は、制限的な中絶法、特にあらゆる状況に置いて中絶を禁止したり犯罪化する中絶に対して強く反対しました(CEDAW/C/CH/CO/4, para.19を参照のこと)。女性差別撤廃委員会はまた、そのような法律は女性が安全でない非合法の中絶を得ようとすることを防げず、制限的な中絶法を生命、健康、情報に対する権利の侵害であるとしました〔注9〕。また国連・子どもの権利委員会は、非常に制限的な中絶法が思春期の少女の健康への権利に与える影響に懸念を抱いています〔注10〕。さらに国連・拷問禁止委員会は刑罰を伴う中絶法は、非人間的で残酷な扱いを受けることから自由である女性の権利を侵害することにつながるため、刑罰つきの中絶法を見直すよう訴えています〔注11〕。国連・自由権規約委員会は、両性の平等の実現のためには、保健分野における平等な待遇、物品やサービスの提供における差別の撤廃が必要であると結論付け、権利の侵害を防ぐために中絶法を見直す必要性を位置づけています(CCPR/C/21/Rev.1/Add.10, paras.20, 28 and 31(一般的意見28)を参照のこと)。健康への権利についての前特別報告者は中絶を求める女性に対する罰則処置を廃止するよう求めました(E/CN.4/2004/49, para.30を参照のこと)。
23. 中絶が犯罪化されている国では、中絶を求める理由によっては罰則を免除されます。しかし最も厳しい場合では、一握りの国において中絶はあらゆる場合に刑罰の対象となるか、または女性の命を救うためだけに中絶が許されています。世界人口の約25%は、強かんや近親かんによる妊娠の中絶、あるいは女性の生命を救うために行われる中絶以外のあらゆる中絶を禁止する政府のもとで生きています。制限がもう少しゆるい国では、いくつかの身体的健康、精神的健康、貧困や子どもの数といった社会経済的理由をもとに中絶を許可しています。最後に56カ国では妊娠のどの時期に中絶が許されるかについてはまだ制限がありますが、中絶理由による制限はありません〔注12〕。
24. その他の法的制限も合法的中絶が利用できない原因の一つになっています。中絶に対する良心的な拒否を認める法律は、医療提供者や受付や薬剤師といった補助的な立場にある人びとが、中絶サービス、手続に関する情報を提供し、別の病院や医療関係者に紹介することを拒否する余地を残すことにより障壁を作っています〔注13〕。その他の規制には次のものが含まれます。中絶ケアに対する公的資金を禁じる法律、妊娠を中絶することを求める女性にカウンセリングを義務づけ強制的な待機期間を設けること、一人以上の医療関係者の承認を必要とすること、親や配偶者の同意を中絶ができる要件とすること、流産を含め女性が中絶後のケアを求めて現れる際に医療提供者が非合法中絶が「疑われる」ケースについて報告を命じる規制などです。このような法律は、特に貧しい女性、行き場のない女性、若い女性たちが中絶や中絶後のケアを利用することを不可能にします。性や生殖に関する医療の他の分野では見られないこのような制限された体制は、中絶が好ましくない行為であるというスティグマを強化します。
25. 世界保健機関(WHO)は、計画外の妊娠をした女性が安全な中絶を行うか安全でない中絶を行うかの方向性を大きく決めるのは、中絶を許可する法律上の理由であることを裏づけています〔注14〕。法的な規制は中絶が安全かどうかに大きく影響を与えるため、中絶に対して厳しい体制において安全でない中絶が起こる可能性が高いです〔注15〕。安全でない中絶の比率と、安全でない中絶の安全な中絶に対する割合は、両方とも中絶法が制限的かつ/あるいは罰則があるかどうかの度合いと相関関係があります〔注16〕。安全でない中絶は世界における全妊産婦死亡のほぼ13%を占めると推定されています〔注14〕。さらに500万人の女性や少女たちは安全でない中絶により出血、敗血症、膣、子宮、腹部器官への外傷、子宮頸部の裂傷、腹膜炎、生殖管感染症、骨盤感染症、慢性的な骨盤痛、ショック状態、不妊といった短期的、長期的傷害に苦しんでいます〔注17〕。
26. 安全でない中絶が起こる状況には以下のような状況があります。情報(特にいつどのように合法的な中絶を行うことに関する情報)へのアクセスが限られていること、非衛生な状態で中絶の技術や知識のない人により行われる中絶、あるいは医療関係者が中絶をするのに適した施設外で行う中絶、妊娠をしている女性自身がする人工妊娠中絶あるいは伝統医療の従事者が子宮に物質を入れたり、有害物を飲んだり、暴力的なマッサージにより行う中絶、薬が間違って投与されフォローアップ治療が行われなかったり、さらなる情報が提供されない状態などです。〔注18〕中絶の犯罪化は、このような安全でない中絶を引き起こし、存続させます。より自由な体制においては、女性は合法的に専門的な医療提供者を通して、安全で早期の流産を自己誘発できる医学的人工流産のための薬(メディカル・アボーション)を含め、安全で医学的に適切な状況で中絶サービスや治療を求めることができます。
27. 刑法による中絶の禁止は、女性の性や生殖に関する健康への国家の介入を非常にはっきりと表現するものです。なぜなら、刑法による中絶の禁止は、女性が自分の体をコントロールすることを制限し、不必要な健康上の危険にさらす可能性もあります。刑法による禁止は女性がそのように選択することを望まないとしても計画外の妊娠を継続し、出産することを義務づけています。行われた中絶が合法であるかに関わらず政府には女性が中絶後に必要とする医療サービスの利用を拒絶されないように保障する義務があります。
28. 政府は、第三者による健康への権利の侵害から保護する義を負っています。中絶が禁止されている国では、医療従事者の研修や資格についての規定等の中絶に関する公衆衛生や安全についての規則は存在しえません。したがって安全でない中絶が行われる可能性を高くします。利用しやすく、安全な中絶サービスについての適切な規制や規定を定め、中絶を非犯罪化することが、健康への権利を第三者による侵害から保護する最も迅速な方法です。さらに政府は中絶や中絶に関連するサービスを提供する人びとが、政府以外の主体による嫌がらせ、暴力、誘拐、殺人から保護するための対策を取らなければなりません。
29. 政府は合法で安全な中絶サービスが利用可能で、利用しやすく、質が高いものとするための措置を取らなければなりません。しかし安全な中絶は非犯罪化したからといって中絶が提供される状況を政府が作るまでは、すぐに中絶サービス利用できるようになるわけではありません。それには利用可能で利用しやすいクリニックを設立すること、医師や医療関係者へのさらなる研修の提供、施術者の資格要件の制定、最新かつ最も安全な医薬品や設備の利用を確保することなどが含まれます。
30. 女性は健康への権利の一部として、国家による平等な健康の保護を受ける権利があります。中絶の法的状況にかかわらず、女性は性や生殖に関する物品、サービス、情報を利用できる権利があります。女性は特に安全でない中絶や流産によるものも含め合併症への対応のために質の高い医療を受ける権利があります。それらの対応は刑事処分の恐れがある場合でも無条件になされるべきであり、その後の刑事訴追への女性の協力が医療を受ける条件であるとするべきではありません。また女性や中絶サービス提供者に対する訴訟手続きにおいて証拠として用いるべきではありません。法は女性が中絶に関連した治療を受けにきたことを警察や司法当局に報告することを義務づけるべきではありません。
31. 刑法による中絶の絶対的な禁止は、時に女性の生命を救う手続きを女性が利用する機会を奪います。闇中絶が比較的安全で衛生的な環境において行われる場合においても、最も弱い立場におかれた女性たちは経済的に利用できない可能性があります。そのかわりに貧しく周縁化された女性たちは、安全でない自己誘発の中絶に向かうかもしれません。女性の生命を救うといった狭い領域において中絶の犯罪化への例外が存在するところでも、犯罪化は合法的な中絶サービスについての情報の利用を事実上閉ざしてしまうことがあります。中絶の問題に対する汚名、烙印がこのように必要な情報の普及や議論を妨げるため、女性がこれらの例外について知らないこともままあります。刑法にはしばしば中絶についての情報の発信を禁じる明白な条項が含まれており、中絶に関する情報の利用に関する法的制限も存在します。
32. 質の低い医療品や医療サービスの提供は、中絶を犯罪化する法体制において主な問題となっています。これらの状況において医療行為に対する国家によるあるいは職業上の規制が存在しないならば、法的処罰を逃れるために、非衛生的な状況での技術や知識のない人が中絶を行うことになります〔注19〕。その反対に訓練を受けた医療関係者が適切な環境で中絶を行う場合、中絶は最も安全な医療措置に属することにります〔注20〕。さらに、犯罪化は、中絶を行う人が正確な医療情報を得るのを妨げ、犯罪化に例外が設けられる場合、スティグマにまつわる萎縮効果は医療従事者が中絶に関して教育や情報を受けることを阻むかもしれません。したがってこのような状況において中絶を行うことを選ぶ医療従事者は、適切な中絶の処置や中絶後のケアについての知識や教育を得られず、合法な中絶の質や利用しやすさを低めることになる可能性があります。
33. 医療従事者は、合法に利用できる性や生殖に関する医療サービスを女性が利用するのを拒んだり、別の場所で闇中絶を行ったことで生じる合併症により苦しむ女性の治療を拒んだりしてきました。中絶を取り巻く汚名、烙印によって、女性は一回だけしか合法な中絶を受けることができないと述べるなど間違った情報を医療従事者が女性に伝えてきました。
34. 中絶にまつわる汚名や差別によって女性が周縁化され弱い立場におかれることにより、健康への権利の侵害が続きさらにその激しさを増します。中絶に関する汚名は女性が中絶を求めたり、中絶を行った女性が合併症の治療を求めたりするのをためらわせます。中絶が報告される件数が実際の数よりもかなり少ない(報告数は実際の件数の35%から60%)という状況は、中絶に付随する汚名の大きさを示しています。多くの社会的、文化的要因が中絶に付随する汚名を生み出し、増大させていますが、犯罪化は差別を永続させ新たな汚名を生みだします。たとえば中絶にまつわる汚名の結果、女性の不妊の原因が中絶とは関係のない健康障害によるものであると認めるのではなく、以前行った中絶であると誤解され、女性に「過失」があるとされてしまいます。
35. 犯罪化による汚名は悪循環を生じさせます。中絶の犯罪化が結果的に女性を安全でない可能性の高い闇中絶に追いやることがあります。非合法の中絶を行うことによる汚名とそれにより法律を犯すことで、中絶が不道徳な行為だという考え、そして中絶のための処置が本質的に安全ではないという考えを助長します。そのような考え方がまた中絶措置の犯罪化の存続を強化します。
36. 中絶の犯罪化は精神的健康にも深刻な影響をもたらします。非合法の医療サービスを求める必要性と中絶手続きや中絶を求める女性に対する汚名は女性の精神的健康に有害な影響をもたらす可能性があります〔注21〕。場合によっては、中絶にまつわる汚名や苦痛が蓄積して女性が自殺することもあります〔注22〕。強かんが中絶の理由として認められていない地域では、強かんにより妊娠し妊娠を継続することを望まない女性や少女たちは、出産予定日まで妊娠を継続することを強いられるか、非合法の中絶を求めるよう強いられます。どちらの選択も激しい苦悩を引き起こします。どちらの選択をするにしても、刑事司法制度の中で取り調べを受け、起訴され、処罰されるという全般的な脅威は、中絶を求める人に対しても中絶を求めない人に対しても情緒的健康や心身の福利状態(に悪影響を及ぼします。さらに非合法な中絶を求める心理的な影響や望まない妊娠を出産予定日まで継続する心理的影響についてはよく文書化されているものの、本人の意思による人工妊娠中絶による長期にわたる精神的健康の後遺症の存在を立証するような証拠はありません〔注23〕。

2. 妊娠や出産の際の行動のコントロールや犯罪化

37. 妊産婦医療、産前と産後のケア、情報の利用はすべて、社会権規約一般的意見第14号における健康への権利に含まれる要素です。国連・社会権規約第10条2項は、母親に特別な保護が与えられるべきであると規定しています。女性差別撤廃条約も女性が妊娠に関わる適切なサービスを提供されるべきだと認めています。国際人口開発会議の行動計画第7章Aは、性と生殖に関する健康には女性が妊娠と出産を安全に乗り切るのを可能とするサービスが含まれるとしています〔注24〕。妊娠中そして出産後の女性を支援するこれらの積極的な義務が国家にあるにもかかわらず、国家によってはある形態の行動を禁じる刑法や他の法的制約を提案したり実施したりしています。それにより該当する女性の健康への権利が侵害されています。
38. いくつかの地域では、妊娠している女性は妊娠中にさまざまな種類の行動をとったことにより起訴されています。児童虐待、殺人未遂、過失致死罪、法に触れる過失致死に関する以前から存在する法律におけるものを含め、妊娠している女性が違法薬物を用いたことにより多くの女性が起訴されています。妊娠中のアルコールの摂取、死産、胎児の流産(A/HRC/17/26/Add.2, para.68を参照のこと)、医師の指示に従うことができなかった場合、性交を慎むことができなかった場合、出産の隠匿といったその他の行為により女性を起訴するためにも刑法が用いられています。
39. 出産前の薬物服用が親権の停止や出産直後に子どもを取り上げることへの理由となる場合、出生前の薬物服用への処罰を含めるよう児童福祉に関する民事法制の範囲が広げられていることもあります。妊娠女性の要請の毒物検査報告書や新生児に薬物暴露の臨床兆候が見られる場合、これらの法制において児童虐待や二グレクトの証拠と見なされる可能性があります。法令によっては、医療従事者が妊娠女性や新生児に薬物暴露の検査を義務づけている場合、あるいは女性に検査をすることが通知されるという条件で検査を行うことができるとする場合があります。妊娠期間中に薬物を用いた女性の収容を許可する法律を制定している国もあります。医療従事者が薬物検査結果を政府に報告することが義務づけられている場合もあります。
40. 周産期のHIV感染を犯罪化している国もあります。たとえばある国や地域では、HIVに感染し、(かつと感染していることを自覚し)ている人は「他の人へのHIV感染を防ぐための妥当な手段、予防措置を取らなければならない。妊娠女性の場合には、胎児に感染への感染を防がなかった場合、刑事制裁が課せられる」とされています(A/HRC/14/20, para.67を参照のこと)。この場合、予防のための医療品、サービス、情報の利用ができない、あるいは予防のための医療品、サービス、情報がない場合でも例外や抗弁は認められていません。HIV感染全体を犯罪とするその他の国の法律においては、周産期の感染が含まれる可能性があります。
41. 妊娠中の行動の犯罪化は医療品、医療サービスの利用を妨げ、妊娠女性の健康への権利を侵害します。女性が刑事訴追を恐れる場合、医療サービスや医療ケア、並びに妊娠に関する情報を利用するのを思いとどまるかもしれません。たとえばHIV感染により起訴される可能性に直面するとしたら、そのことにより自分の健康や胎児の健康に危険が及ぶかもしれない女性たちは出産前の医療サービスを求めないかもしれません。このことはHIVに関する公衆衛生の目的に反するものです。というのも感染により処罰の対象になるかもしれないとしたら、女性たちは検査そのものを拒否するかもしれないからです。
42. 公衆衛生の目的がある程度の個人的自由への干渉を正当化できるなか、公衆衛生の目的は犯罪化によって実現されてはいないことが報告されています。むしろ公衆衛生の目的は犯罪化により損なわれていることがしばしばです(A/HRC/14/20を参照のこと)。妊娠期間中のアルコール摂取といった行動を規制する刑法の実施は不均衡な対応で、効果のない妨害物です。いくつもの専門者の医師会は、無効性と不均衡さにより妊娠女性による薬物乱用に対抗する手段として刑法を用いることに反対しています〔注25〕。公衆衛生の成果を効果的に挙げるため、そして同時に女性の人権を推進するために、国家は妊娠中の薬物乱用といった行為を犯罪化すべきではなく、むしろ妊娠や出産を通して健康を推進する医療品、医療サービス、情報の提供を保障すべきです。
43. いくつかの刑法は、国家が健康への権利を実現する責任を女性に転嫁して、政府による医療品、医療サービス、教育を効果的に提供できていないことにより女性を罰しています。たとえばHIVと共に生きる女性が、胎児へのHIV感染を予防するために妥当な手段や予防措置を取らなければならないところ、医療サービスや抗レトロウィルス治療を利用できない、あるいは限られた利用しかできない場合、女性が刑事訴追を避けるために必要なものを国家が提供できないでいることになります。特別報告者は「適切な医療サービスを利用する権利が保障されていない場合、女性は刑事責任を問われる危険性がある感染を防ぐために必要な予防措置を取ることができません」(A/HRC/14/20, para. 66を参照のこと)。医療品、医療サービスの利用やアクセスは政府の責任であるため、政府の不備により女性が刑法で処罰される可能性があるのは特に道理に反しています。

3. 避妊と家族計画

44. WHOは、家族計画を人びとが避妊方法や不妊治療を通して望む数の子どもを得て、妊娠の間隔を決めることを可能とする一連の行為と定義しています〔注26〕。家族計画の利用は健康への権利に切っても切れない要素です。避妊は出産抑制の方法で、出産抑制の方法により家族計画に影響を及ぼします。主にコンドームといった物理的障壁を用いた避妊法を通して性感染症を防ぐために避妊法を用いることもできます。その他にも外科的不妊手術や経口避妊薬(経口避妊薬では性感染症を防ぐことはできません。)といった薬剤的方法など多くの避妊法が存在します。
45. 家族計画は女性が自立し性や生殖に関する健康についての選択を情報に基づいて行うことができる力を与えてくれます。家族計画は早い年齢での出産により健康問題や死亡の確率が高くなってしまう若い女性の妊娠を遅らせることにより、妊産婦死亡を減少させます。家族計画を自発的に利用できることにより妊産婦死亡を25%から40%減せるという証拠があります〔注27〕。また家族計画は安全でない中絶の数を減らし、周産期のHIV感染を防ぎます。コンドームの使用は性感染症の発生数を減らすだけではなく、正しく常に使用すれば男性用のコンドームは妊娠を防ぐのに98%の割合で効果的です〔注26〕。
46. 世界中での家族計画への満たされていないニーズは、権利に関する目標、や開発目標を達成する障壁となっています。WHOは開発途上国の2億人のカップルが出産を遅らせるか止めたいと思っているけれども避妊方法を用いることができないでいると推定しています〔注26〕。2009年には後発開発途上国における婚姻しているかパートナー関係にある出産可能年齢の女性の24%が、これ以上子どもがほしくないか、次の子どもの出産を遅らせたいと思っていると報告しています〔注28〕。世界的に満たされていないニーズの理由には、避妊の利用が限られていること、避妊法の選択が限られていること、副作用への恐れ、あるいは副作用の体験、文化的、宗教的な反対、利用できるサービスの質が低い、ジェンダーに基づく障壁などがあります。
47. 家族計画は、女性が出産するかどうか、そしていつ出産するかを選択することを可能とし、女性の社会での開発と社会への充分な参画にとって不可欠なものです。サハラ以南のアフリカの一部では、中等教育を受けている女性の避妊の利用は、教育をまったく受けていない女性と比較して4倍の高さで、最も裕福な家庭の女性の避妊の利用は、最も貧しい過程の女性と比較して4倍の高さです〔注29〕。ある国際比較調査は、労働力における女性の割合は、その国の出生率に直接関係していることを示しています。女性の避妊の使用と家庭の外で働く機会の間に強いつながりがあることも確認されています。ある国では、1回から3回妊娠したことのある女性の所得の伸びは、7回以上妊娠したことのある女性の2倍です〔注30〕。
48. 家族計画のための物品やサービス、あるいは緊急避妊薬といったある特定の避妊方法の利用を減らす、あるいは否定する刑法やその他の法的制限は、健康への権利の侵害となります。女性差別撤廃条約は、家族計画に関する情報や助言を含む家族の健康や福利を保障することを助ける特定の教育的な情報を得ることができ、家族計画についての情報、カウンセリング、サービス等を含む適切な医療施設を利用することができるよう国家が保障することを求めています〔注31〕。社会権規約委員会一般的意見第14号の中では、同委員会は、「家族計画の利用…情報へのアクセス、そして情報にしたがって行動するための資源を含め、子どもや妊産婦の健康、性や生殖に関する医療サービスを向上する」ための対策を取るよう国家に求めています(E/C.12/2004/4, para.14を参照のこと)。 
49. 国際人口開発会議行動計画第2章原則8は、両性の平等に基づき家族計画や性に関する健康を含む生殖に関する医療を含め、医療への普遍的なアクセスを保障するためのあらゆる適切な措置を国が取らなければならないことを確認しています。また、国際人口開発会議行動計画第2章原則8は、家族計画が、女性がそのサービスの計画、提供、管理、評価に関わる際に最も成果を上げることを強調し、参加を促しています。また家族計画のサービスや方法の情報や利用へのあらゆる不必要な法的、医学的、臨床的、規制的な障壁を取り除くよう付け加えています。北京行動綱領の第96項は、女性の人権は強制や差別や暴力から自由な状態で、セクシュアリティに関する事柄について管理する権利やそのような事柄について自由に責任を持って決定する権利を含むと宣言しています。
50. しかし多くの国において家族計画のための物品やサービスの利用は刑法やその他の法的制限により厳しく抑制されています。これらの地域においては、(特に貧しい)女性や男性は、安全で効果的な避妊にアクセスできず、生殖するかどうかの選択の゛自由を否定されています。
51. たとえば、緊急避妊薬を妊娠中絶薬であるとして緊急避妊薬の販売や使用を犯罪化している国もあります〔注32〕。しかしWHOは緊急避妊薬を有効な避妊法としています〔注33〕。そのような法律を理由として計画外の妊娠を出産日まで継続する女性は、結果的に身体的、精神的健康に悪影響を受ける可能性があります〔注34〕。同時に、刑法による禁止で緊急避妊薬を利用できない女性は、最終的に闇中絶を求めなければならなくなるかもしれず、それに伴う健康的なリスクを負わなければならなくなる可能性があります。
52. 外科的な避妊の利用を制限することも、質の高いサービスが利用でき、利用しやすい状態にすることを保障する国家の責務と矛盾しています。たとえば女性への安全で効果的な不妊手術の医療処置である卵管結紮は、国家によっては治療で処置が必要と認められる限られた状況以外では禁止されています。四肢に永久的な損傷を与える暴力を犯罪とする法律と併せて理解すると、この法律は処置を行う医療従事者が刑事責任に問われる立場におくことになり、女性が外科的避妊を利用するのを制限します。女性はかわりに非認可の医療施設で卵管結紮を求めることになるのですが、それには可能性として合併症の危険を覚悟しなければなりません。また処置にお金を払うことのできない貧しい女性たちに実質的に利用を拒むこととなります。
53. 家族計画や避妊の利用を制限するその他の法律には、市全体における事実上の「人工的な」避妊の禁止などが含まれます。この禁止により女性が信頼できる避妊を行うのが著しく困難になりました(A/HRC/14/20/Add.1を参照のこと)。その影響を受ける人口の全70%の大多数は貧しく周縁化されているのですが、女性の不妊手術、経口避妊薬、子宮内装置や注入物質を含むサービスを政府の援助に頼っています(同上)。禁止は多くの女性や男性が家族計画サービスや避妊を利用する機会を完全に奪いました。その他の例としては、さまざまな形の避妊薬具を入手する前に女性が夫の同意を得なければならない、あるいは思春期の子どもたちが親の同意を得なければならないと国家が命じる場合があります。その他の地域では、薬剤師や場合によっては薬局が合法的に利用できる緊急避妊薬を調剤することを拒否することを許していることがあります。これらの法律は女性や少女が性や生殖に関する健康に関して情報に基づき自由に選択する権利を侵害しており、家庭や社会における女性の役割に対する差別的観念を反映しています。
54. 女性には性や生殖に関する健康に関してあらゆるレベルの意思決定過程において意思決定に参加する権利があります。避妊の使用に関する共同体レベルでの参加は、女性の自立を高め、女性がコンドームを使用することを自由に選ぶ力を高めます。そのことにより、出産を抑制する方法を女性に提供するだけではなく、女性の健康を守り、性感染症を防ぐことができます〔注35〕。
55. 健康への権利を尊重する義務は、政府が避妊や性や生殖の健康を維持するためのその他の手段の利用を制限しないようにすることを必要とします。したがって国家は家族計画や避妊用具、避妊サービスや情報の利用を保障するために、親の同意法やその他の第三者の権限付与刑法やその他の法的制限を撤廃されなければなりません。政府の保護義務は、政府が第三者や有害な社会的行為や伝統的慣行が産前、産後のケアや家族計画を利用する障害とならないようにする(E/C.12/2000/4, para.35を参照のこと)、あるいはいくつかの(あるいはあらゆる)避妊法の利用を抑制しないよう保障することを必要とします。最後に政府の実現義務は、国家による公衆衛生対策の導入と実施を必要とします。これには「家族計画や情報の利用を含む広範囲にわたる性や生殖に関する医療サービス」の提供が含まれます(E/CN.4/2004/49, para.29を参照のこと)。

4. 性や生殖に関する健康についての教育と情報

56. 性や生殖に関する健康についての包括的な教育や情報の提供は、健康への権利や、教育への権利や情報へのアクセスといったその他の権利の実現に欠くことのできない要素です。性や生殖に関する健康についての包括的な教育や情報の利用を制限する刑法やその他の法律は、健康への権利の完全な実現とは相容れず、国家が撤廃しなければなりません(E/C.12/2000/4, para.11を参照のこと)。女性と男性は両方ともこれらの障壁により悪影響を受けているのですが、女性はより特に大きな影響を被っています。
57. 国連・社会権規約委員会一般的意見第14号は、情報へのアクセスが健康への権利の重要な要素であるため、情報へのアクセスを重視しており(同上、脚注8)、特に性や生殖に関する健康についての情報へのアクセスを保障しています。また適切な資源を提供するよう国家に要求しており、「性教育や性に関する情報を含め健康に関する情報を検閲したり、差し控えたり、意図的に不正確に伝えたりする」のをやめるよう国に要求しています(E/C.12/2000/14, para. 14を参照のこと)。女性への差別撤廃委員会は、性や生殖に関する教育の内容の包括的な理解はリプロダクティブ・ライツや責任ある性行動、性や生殖に関する健康、HIV/AIDSを含む性感染症の予防、10代の妊娠の予防、家族計画を網羅するとし〔注36〕、女性器切除といった有害な慣行に取り組むために教育キャンペーンが緊急に必要とされていると勧告しています〔注37〕。性と生殖に関する健康についての包括的な教育と情報は、これらの問題に対する男性と女性の知識の格差を埋めるためにも役に立ちます〔注38〕。
58. 国連教育科学文化機関(UNESCO)のセクシュアリティの教育に関する国際的指針は、最善の性教育を「科学的に正しく現実的で中立的な情報を提供するプログラムを含む、年齢にふさわしく、文化に対して繊細で、包括的な取り組み」と表現しています。さらに包括的な性や生殖に関する健康についての教育や情報は、「自分自身の価値観や態度を探り、セクシュアリティのあらゆる側面に関して意思決定力、コミュニケーション力、リスクを減らす力を育む機会」を提供しなければならないとしています〔注39〕。教育への権利に関する特別報告者はさらに、包括的なカリキュラムは性的多様性やジェンダーの視点への敏感さが必要であると強調しています(A/65/162, para.23を参照のこと)。
59. 性や生殖に関する健康についての情報を制限し、学校での同性愛についての議論を検閲する法律は、弱い立場におかれたマイノリティへの烙印を助長させます〔注40〕。たとえば禁欲のみの教育を推進する法律や政策は、生殖に焦点を置き、性教育異性愛の規範のイメージや固定概念に押しこんでしまいます。これらのプログラムにはジェンダー性的指向について明らかに差別的な内容を含む場合すらあります〔注41〕。学校で性や生殖に関するテーマについて議論する際に「不適切な」性的事柄について議論したという理由で停職処分にされる、あるいは訴えると脅される教師たちもいます。また別のケースでは禁欲のみの教育や非猥褻の政策に従い、通学区域や裁判所や国会議員が公立学校での市民社会組織の会合を禁止してきました。このような法律や政策はセクシュアリティについて誤った否定的な固定観念を助長し、異なる性的指向の生徒を疎外し、生徒が性や生殖に関する健康に関して充分に情報に基づいた決断をするのを妨げます。
60. 性や生殖に関する健康についての教育が許されている地域でも、教育の質や効果は政策の実施の仕方によって厳しく制限されています。国家は正確でない情報が記載されたコンドームを配り、あるいはそのテーマについて触れないようにすることで矛盾した正しくない情報が蔓延するのを放置し、コンドームの使用について誤った情報を広めるのを助長してしまいました〔注42〕。同様に性感染症や意図しない妊娠を避けるための方法として性交を慎むことだけに焦点を当てる禁欲のみを強調するキャンペーンは、包括的な視点ではなく限られた不完全な視点しか提供してくれません。正確で証拠に基づく情報に欠けることの多いそのようなプログラムは、性感染症を減少させるにあたってほとんど効果がないか、ごくわずかの効果しかあげていません。
61. ほとんどの若者がHIV/AIDSに関して正確な知識を持っていないことを調査が示していますが〔注43〕、一般的に女性は男性と比較して情報の量が少ないことが多いです。UNAIDSの147カ国の調査では、コンドームでHIV感染を防げることを70%の若い男性が認識していることが分かったのに対し、コンドームがHIV感染予防のための有効な方法であると認識した女性は55%のみでした〔注44〕。女性や少女たちは包括的な性や生殖に関する健康についての教育や情報への法的制限によって、過度に影響を受けています。そのことによりこの数字が示しているジェンダーの不平等を助長、悪化させています。性や生殖に関する健康についての情報や教育の利用に対する法的制限の存在は、非公式の情報源を通した不正確な情報提供につながります。これらの非公式の情報源の情報は不正確であることが多く、否定的なジェンダー固定観念を助長する可能性があります。その結果、若い女性は性や生殖に関わる部分について備えをできず、強制や虐待や搾取に対して脆弱な状態におかれ、意図しない妊娠、安全でない中絶、妊産婦死亡、HIV/AIDSやその他性感染症のリスクを高めることになります〔注45〕。
62. 性や生殖に関する健康のいくつかの側面が犯罪化されている地域では、関連情報の利用しやすさやアクセスが非常に制限されています。たとえば刑法に妊娠の予防や中絶についての情報、あるいは道徳や公序に反するとされる資料を提供することを禁じる条項がある場合があります。刑罰は罰金から禁固刑までさまざまです。さらに、健康に関する情報の規制は、意図せずポルノグラフィー法といったその他の情報に関する法律の成立につながることがあります。ポルノグラフィー法は、性や生殖に関する資料を犯罪化するよう拡大されることがあります〔注46〕。このようにHIV/AIDSや性感染症に関する教育キャンペーン、家族計画、ドメスティック・バイオレンスジェンダー差別、女性器切除、性的多様性、性や生殖に関する健康全般といった情報に頼る公衆衛生とエンパワメントのプログラムや活動は、事実上禁止されています。女性や少女たちは利用できるサービスとプログラムの間のギャップにより影響を受ける可能性が最も高いです。というのも女性や少女たちはHIV/AIDSや性感染症、妊産婦死亡、安全でない中絶、望まない妊娠あるいは計画外の妊娠のより高いリスクにさらされるからです。
63. 性や生殖に関する健康についての適切な知識は、妊産婦死亡率を低下させ、意図しない妊娠、安全でない中絶、HIV/AIDSやその他の性感染症を防ぎ、性交の開始を遅らせ、家族計画の選択についての知識を増し、ジェンダーに基づく暴力から守る上で効果的であることが繰り返し証明されています(E/C.12/2000/4, para.21を参照のこと)。性や生殖に関する健康についての包括的な教育や情報をとおして女性をエンパワーすることは急を要します。というのも若い女性は関係において力やコントロールが弱く、強制や虐待や搾取に弱い立場に置かれがちだからです〔注47〕。エンパワメントの道具として、そしてジェンダーの不平等や固定観念を批判的に検証するための手段として、包括的な教育と情報は深く根付く家父長制の土台を弱める方法となることでしょう。そのような家父長制的制度は健康への権利を含め女性の権利侵害を助長させています(A/65/162, paras.7-9を参照のこと)。女性に性や生殖に関する知識や技術、またそれに関する教育や情報を提供することは、女性が健康に関して情報にもとづく決断を行う自由を高め、社会における平等な参画を推進します。
64. 性や生殖に関する健康についての情報へのアクセスを制限する刑法やその他の法的規制を実行、強化する政府は、情報へのアクセスを積極的に減らしており、健康への権利を尊重する義務を満たしていません。そのような法律や法律が生み出すスティグマにより、教師や出版社や書店といった第三者も女性や少女たちが性や生殖に関する健康についての資料を利用しようとするのを拒む可能性があります。健康への権利を実現する国家の責務は、包括的な性や生殖に関する教育や情報があらゆる人びと、特に女性や少女に提供されることを保障する戦略を立てることを国家に要求しています。


V. 勧告

65. 健康への権利アプローチを適用するに際して、国際人権法において求められているように国家は性や生殖に関する健康についての政策やプログラムの開発や実施に向けて改革を遂行しなければなりません。上記の背景において特別報告者は各国に次のことを要求します。

(a) 性や生殖に関する健康や周産期のHIV感染予防について、証拠にもとづく情報を普及させる公衆衛生政策やプログラムを作成する
(b) 避妊に関する幅広い物品、サービス、情報を提供する包括的な家族計画政策やプログラムを作成し、アクセスでき、利用しやすく、質の高いものとする
(c) あらゆる避妊や産児調整のための自発的不妊手術の供給や使用を非犯罪化し、配偶者や親による同意の要件を廃止する
(d) 外科的方法による避妊法や薬剤による避妊法を含め幅広い避妊方法のアクセスしやすさ、利用しやすさ、質を保障するような手筈を取る
(e) 性や生殖に関する健康についての証拠にもとづく教育を含め、性や生殖に関する健康に関する情報提供を非犯罪化する
(f) ポルノグラフィーに関する刑法といった既存の刑法が、性や生殖に関する健康についての証拠にもとづく情報や教育への利用を制限するために用いられるものではなく、性や生殖に関する健康についての情報や教育を提供する人びとを罰するために適用されないよう保障する
(g) 性や生殖に関する教育が包括的で証拠に基づいており人権、ジェンダーセクシュアリティについての情報を含むものとするように政府のカリキュラムを標準化するための措置を取る
(h) 中絶の教唆に関する法律のような中絶に関連する法律を含め、中絶を非犯罪化する
(i) 暫定措置として責任ある機関による、医療従事者が法執行機関に女性について報告義務も含め、中絶に関する刑法の適用を一時停止する政策や手順の作成を検討する。
(j) 中絶を含めて、サービスを利用する際にWHOのプロトコルに従った安全で質の高い医療サービスを保障する
(k) 特に中絶が犯罪とされている地域においてWHOのプロトコルに従って中絶に関わる合併症や中絶後のケアのために安全で信頼でき質の高いサービス政策やプログラムをアクセスでき、利用しやすい状態であることを保障する政策やプログラムを策定する。
(l) 中絶に関して正確で証拠に基づく情報や法的な利用が公にできる状態となることを保障し、医療従事者が中絶やその例外に関する法律について充分な知識を確実に持つようにする。
(m) 中絶に対する良心的拒否の免責は範囲を精巧に定義して、使用の際にも充分に規制され、サービス提供者から拒否の申立てがあった場合には、紹介や別のサービスが利用できることを保障しなければならない。
(n) 胎児の扱いに関する行為、中でも顕著なものとして流産、アルコールや薬物の摂取、HIV感染といった妊娠中のさまざまな行為への既存の刑法の適用を停止し、あるいは廃止する。


脚注
1 See E/C.12/1/Add.98, para. 43; E/C.12/1/Add.105 and Corr.1, paras. 53 and 54; E/C.12/BRA/ CO/2, para. 29; and E/C.12/COL/CO/5, para. 5.
2 See in particular articles 5, 10 (h), 11, 12.1 and 16.
3 See United Nations Population Fund, Eight Lives: Stories of Reproductive Health (New York, 2010).
4 United Nations, Treaty Series, vol. 1577, No. 27531, article 24; see also CRC/GC/2003/4, para. 31.
5 United Nations publication, Sales No. E.10.I.7.
6 Paul Hunt and Judith Bueno de Mesquita, The Rights to Sexual and Reproductive Health (Colchester, Essex, University of Essex, 2006).
7 See CRC/C/15/Add.268, para. 46(e); CEDAW/C/CHN/CO/6, para. 32; E/CN.4/2004/49, para. 25.
8 With the exception of men who have sex with men; see A/HRC/14/20.
9 See A/53/38/Rev.1, para. 337; and A/54/38/Rev.1, part I, paras. 56, 228 and 393.
10 CRC/C/15/Add.107, para. 30; CRC/C/CHL/CO/3, para. 55; and CRC/C/URY/CO/2, para. 51.
11 CAT/C/PER/CO/4, para. 23; CAT/C/NIC/CO/1, para. 16; and CAT/C/CR/32/5, para. 7.
12 R. Boland, “Second trimester abortion laws globally: actuality, trends and recommendations”, Reproductive Health Matters, vol. 18, No. 36 (2010), pp. 67-89.
13 Louise Finer and Judith Bueno de Mesquita, Conscientious Objection: Protecting Sexual and Reproductive Health Rights (Colchester, Essex, University of Essex, 2010).
14 WHO, Unsafe Abortion: Global and Regional Estimates of the Incidence of Unsafe Abortion and Associated Mortality in 2008, 6th ed. (Geneva, 2011), p. 2.
15 Axel I. Mundigo, “Determinants of unsafe induced abortion in developing countries”, in Ina K. Warriner and Iqbal H. Shah, eds., Preventing Unsafe Abortion and its Consequences Priorities for Research and Action (New York, Guttmacher Institute, 2006), pp. 51-54.
16 WHO, Safe Abortion: Technical and Policy Guidance for Health Systems (Geneva, 2003), p. 86.
17 Lori Ashford, “Hidden suffering: disabilities from pregnancy and childbirth in less developed countries” (Washington, D.C., Population Reference Bureau, 2002). Available from: http://www.prb.org/pdf/HiddenSufferingEng.pdf.
18 Michael Vlassoff and others, “Estimates of health care system costs of unsafe abortion in Africa and Latin America”, International Perspectives on Sexual and Reproductive Health, vol. 35, No. 3 (2009), pp. 114-121.
19 WHO, Unsafe Abortion: Global and Regional Estimates, p. 7 (see footnote 14 above).
20 WHO, Safe Abortion: Technical and Policy Guidance, p. 14 (see footnote 16 above).
21 WHO, Mental Health Aspects of Women’s Reproductive Health (Geneva, 2008), p. 54.
22 Ibid, p. 52.
23 Vignetta E. Charles and others, “Abortion and long-term mental health outcomes: a systematic review of the evidence”, Contraception, vol. 78, No. 6 (December 2008), p. 436.
24 United Nations, Treaty Series, vol. 1249, No. 20378, article 12.
25 National Advocates for Pregnant Women, “What’s wrong with making it a crime to be pregnant and to have a drug problem?” (9 March 2006).
26 WHO, Family Planning, Fact sheet No. 351 (April 2011).
27 World Bank, “Population issues in the 21st century: the role of the World Bank”, Health, Nutrition, and Population (Washington, D.C., April 2007).
28 World Contraceptive Use 2010 (POP/DB/CP/Rev2010), available from http://www.un.org/esa/population/publications/WCP_2010/Data.html.
29 Millennium Development Goals Report 2010 (United Nations publication, Sales No. E.10.I.7), p. 37.
30 World Bank, “Population issues”, p. 26 (see footnote 27 above).
31 United Nations, Treaty Series, vol. 1249, No. 20378, articles 10 (h), 14 (b).
32 Eileen Kelly, “Crisis of conscience: pharmacist refusal to provide health care services on moral grounds”, Employee Responsibility Rights, vol. 23, No. 1 (2011), 37-54.
33 WHO, Emergency contraception, Fact Sheet No. 244 (revised October 2005). Available from http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs244/en/index.html.
34 WHO, Mental health, p. 55 (see footnote 21 above).
35 For example, in Kolkata, India, the rate of condom use among sex workers rose from 3 to 90 per cent over the course of seven years as a result of a community-led structural intervention called the Sonagachi Project. See T. Ghosea and others, “Mobilizing collective identity to reduce HIV risk among sex workers in Sonagachi, India: the boundaries, consciousness, negotiation framework”, Social Science Medicine, vol. 67, No. 2 (2008), pp. 311-320.
36 See A/56/38, para. 224; A/56/38, para. 303; A/53/38, para. 349; CEDAW/C/PHI/CO/6, para. 28.
37 See E/C.12/1/Add.78, para. 31; and E/C.12/1/Add.62, para. 39.
38 UNAIDS, Global Report on the AIDS Epidemic 2008 (Geneva, 2008).
39 UNESCO, International Guidelines on Sexuality Education: An Evidence Informed Approach to Effective Sex, Relationships and HIV/STI Education (Paris, 2009), p. 61.
40 See the International Centre for the Legal Protection of Human Rights (INTERIGHTS) v. Croatia; Human Rights Watch, Rights at Risk, Executive Summary (2011); and BBC, “Brazil sex education material suspended by President” (25 May 2011). Available from
http://www.bbc.co.uk/news/world-latin-america-13554077.
41 See A/65/162, paras. 68 and 69; and A/HRC/14/20/Add.3, para. 25.
42 UNESCO, “Review of sex, relationships and HIV education in schools” (2007), pp. 16 and 17.
43 UNAIDS, Global Report 2008, p. 98 (see footnote 38 above).
44 Ibid.
45 UNESCO, International Guidelines on Sexuality Education, p. 2 (see footnote 39 above).
46 Amnesty International, Left Without a Choice: Barriers to Reproductive Health in Indonesia
(London, 2010).
47 See UNESCO, International Guidelines on Sexuality Education, p. 20 (see footnote 39 above).