世界的な逆境の時代にこそ、私たちのリプロダクティブ・ライツを!

リプロダクティブ・ライツ実現のための女性たちの世界的なネットワークWGNRR(Women’s Global Network for Reproductive Rights)による国際女性デーの声明

 貧しい都市部や農村地方、先住民のコミュニティ、紛争地域や緊急事態下で生きる世界中の女性たちや女の子たちにとって、現在の金融危機の意味は次のようなものです。

· 彼女たちは、真っ先に仕事を失うか、賃金が安い「3D」(汚くて、屈辱的で、危険な)仕事にやむなく従事させられる。

· 彼女たちの多くは、意に反して買春の対象とされたり、不法にも人身取引の対象とされる。

· 元専門者や中流階級に属していた人たちは、増加しつつある貧困層や失業層になる。

· 多くの政府の偏った価値観の中で優先順位が最下位にされるため、国の緊縮経済は、母子医療保健やジェンダー主流化の企画や、その他の基礎的な社会保障事業を削減する方向に動く。

· 貧困の増加は国内の社会の紛争を巻き起こし、これまで以上に多くの女性と女の子が性暴力の被害にあい、人権を踏みにじられ、攻撃の標的になり、無視される。

· 国際的にも国の中でも、既存のリプロダクティブ・ライツ保障は、徐々に崩れていく。

· 草の根の女性と女の子のための補助金や援助は削られてしまう。

 世界の貧困者の多数を占める女性たちは、この数十年のグローバリゼーションの犠牲者でした。彼女たちの貧困と周辺化は、ごく一握りの巨万の富を築く者たちのための世界経済システムのせいで起きているのです。

 きれいな水や食糧、避難所、教育、生活手段の不足は、現在の経済危機の結果というよりも、もともとあった社会の矛盾が危機によって悪化したものというべきでしょう。それは、階級と人種とジェンダーでの基本的な社会的不平等と不公正による草の根の女性と女の子たちにとっての日常的な現実です。社会的不平等と不公正は、多くの国では、植民地であったことで歴史的に埋め込まれたものです。

  規制のない金融取引、利益中心の資本主義的過剰生産、地理的な国境のない労働力市場での不公正な賃金設定、その世界の「北」の「普通の経済政策」の覇権は、世界の「南」の国々の歴史的な貧困の課題に取り組まないだけでなく、むしろ悪化させるものです。世界ではこれまで体験したことがないほどの富の創造と蓄積が起きています。ごく一握りの者たちに富が集中し、あろうことか、世界の貧困を終わらせる手段して吹聴されています。

 金持ち、例えばアメリカ合州国の富裕層の者たちは、過剰消費と負債の熱狂の中で押し合いへし合いし、その結果として、生活必需品の過剰生産と、政府による途上国への貿易での巨額な不均衡投資を促進しました。2007年の初めに供給過剰に陥ったため、合州国では住宅価格が暴落。住宅所有者の収入の実質価格が低下し、基本的な必需品のコストが引き上げられたため、ローンが払えない不履行の割合が上昇。その結果、多くの人たちが破産し、家を失いました。それから、会社が債券と不動産を大量に注ぎ込んで借り入れをしたので、投資家は担保が付された債券に群がりました。そして抵当不動産部門は暴落し、不履行の増加は債券を紙クズ同然のものとし、世界中の再保証会社や債権者を巻き込む流れになりました。そして、市場に不安が先走って弱体化し、その結果、取引のコストも上昇しました。貸出が厳しくなったので、あらゆる企業と個人の購入者が頼り依拠していた短期貸付は利用しにくくなりました。成長は減速し、会社が経費を削減した結果、従業員などの解雇が始まりました。

 過去に東南アジアやラテンアメリカの経済が暴落したとき、IMF世界銀行が作った経済の仕組みにつかまれた国々は破綻寸前の状態に陥りました。銀行は破綻し、企業は破産し、人々の収入の価値は急落しました。北の人々が危機にさらされている今日、市場の自浄作用にゆだねるという過去と同じ処方の結末は、すでに歴史の中にあるのに、まったく議論の対象になっていません。

 先進国の政府は、私たちに現在の資本主義的サイクルが、規制をすればじきに制御可能なものに回復でき、世界の人々に貢献すると信じ込ませています。しかし、銀行への緊急援助、低金利、抵当物件つき負債の借り替えや景気刺激策は、貧しい者たちの現実を希望にかえるものではありません。そのような政策は、ただ銀行や大企業やその無能な経営者が直接利益を得ることになるだけです。銀行を救えば、そのおこぼれが貧しい人にも届くという、トリックルダウンという論理はもう聞き飽きました。私たちは心底、新しい展開の智恵を必要としています!

 「市場を救う」か「市場の自浄作用に任せる」かでなく、最終的に市場を世界の大多数の人々に貢献するものにすることが必要なのです。

 WGNRR(Women’s Global Network for Reproductive Rights)にとって、国連が、国際社会で最高の関心を考慮に入れて、世界金融危機の解決策を見出そうと呼びかけていることに照らせば、第一歩は地方、国家、地域、世界というすべてのレベルで対話と意思決定プロセスを民主化することです。当然ながら女性と女の子は、このプロセスに参加できなければなりません。女たちの人生、つまりリプロダクティブ・ライツは無視されてはなりません。

 とくに「ジェンダーによる差別が貧困の原因であり、結果である」という事実を、もう一度肝に銘じるべきです。

 WGNRRは、すべての人が利用できる基礎的保健医療(プライマリ・ヘルス・ケア)やリプロダクティブ・ヘルスサービスを含む社会保障の復活と拡大を、世界中の政府が確実に実現すべきと考えます。世界金融危機は表面的な現象と解決だけでなく、その起源から語られるべきです。資源は国々の中で人々に、南北の間で、また人種、階級、性別にかかわりなく、平等で公正に分配されなければなりません。

 この現在の局面は、世界の人々が団結し協力できる、先例のない機会です。国際機関と各国政府に責任が果たさせる機会です。また、世界中の人々が莫大な創造性を引き出すことができるようになり、すべての人にとっての健康を実現し、教育し、育て、保護できるようになる機会です。

 本日の国際女性デーに、女性たちと女の子たちのリプロダクティブ・ライツが犠牲にされるのではなく、現在の危機の実質的で決定的な解決策を保証するために、むしろ支持されるべきであることを、世界的な逆境の今、私たちは呼びかけます。

 

 私たちのリプロダクティブ・ライツに注目し、掲げてください!

WGNRR(Women’s Global Network for Reproductive Rights)

2009年3月8日