Thirty-five Years of Legal Abortion in the U.S.: The Unfinished Agenda アメリカ合州国での35年間の合法な妊娠中絶:未完成の課題 by Marlene Gerber Fried 

Thirty-five Years of Legal Abortion in the U.S.: The Unfinished Agenda
アメリカ合州国での35年間の合法な妊娠中絶:未完成の課題

by Marlene Gerber Fried 

はじめに

 2008年1月22日は、アメリカ合州国で妊娠中絶が合法化されてから35回目の記念日でした。合法化されて以降、何百万もの女性たちが、生命や健康を危険にさらすことなく、必要とした妊娠中絶を受けてきました。しかし、何百万もの妊娠中絶を必要とする女性たちが妊娠中絶を利用できません。妊娠中絶を合法化した最高裁判所判決ロウ対ウェード判決は、中絶の合法化と実際に中絶を利用できることとの間のギャップという課題を置き去りにしました。そのギャップは、中絶に反対する勢力が、法的制限、不要で利用者に負荷の多い規制、中絶を提供するクリニックや医療従事者に対する継続的な脅しと暴力的な攻撃で満ちた溝に変化しました。今日、中絶は、確かに合法的ではあるが、制限され、汚名をきせられて、絶えず攻撃にさらされています。それは、最も社会の中で弱い立場に置かれた女性に起きていることです。たとえば、貧しい女性、有色人種の女性、若い女性たちは、しわ寄せをうけ、最も大きな障壁に直面しています。

 本稿では、私は中絶が合法化されて以降、中絶権が浸食されていること、中絶反対者たちと中絶擁護者たち政治戦略、中絶擁護運動者たちの分裂について、新しい視点、戦略とリーダーシップが必要であるので、議論します。私は、長く活動者としてかかわってきた経験からこの課題に取り組んでいます。私は、ロウ対ウェードへの反動勢力がハイド修正で大きな「(プロライフにとっての)勝利」をした、1977年に中絶についての運動に参加しました。ハイド修正とは、妊娠中絶のために連邦の資金を使うことを禁止するものであり、そのためロウの対ウェード判決を貧しい女性たちが利用できることを事実上封じてしまいました。このハイド修正の成立は、中絶権運動の中での、人種と階級の力学を具体化しました。単に中絶が合法性であるというだけでなく、実際に利用できることが有色人種や貧しい女性たちにとっては、中心的な関心事であるという事実を無視して、中絶権擁護(Pro-choice)運動は、ハイド修正で封じられた中絶への公的資金の支出の復活について、優先課題とはしませんでした。その代わりに、中絶権運動はロウ対ウェード判決を防御することに集中しました。

(コラム)The Hyde Amendmentハイド修正について

妊娠中絶の合法化への継続的な攻撃として、共和党議員ヘンリー・ハイドは、強姦、近親姦または妊娠した女性の生命が脅かされている場合であっても、妊娠中絶サービスに連邦の資金を利用することを禁止する法案を提案しました。米国議会は1976年にその法案を承認しました。法案では隔州が自州の予算で妊娠中絶を受ける機会を支援することにゆだねられ、現時点では、17の州だけが妊娠中絶に資金を提供しています。

 私がこのような政治的なアプローチには批判的ですが、中絶権擁護派運動の他の面と同様に、私は女性たちが自分の人生をコントロールする能力を獲得できるためのより幅広い闘いの一部として、中絶権を確保するために闘うことの重要性にも確固として関与します。米国での私たちの闘いは、進行中です。私たちは妊娠中絶に関して後退してしまい、新しい難問に取り組んでいます。たとえば、私たちの敵は、胎児を擁護することよりも女性を保護することについて話すようになり、アプローチを変化させました。妊娠中絶が女性に対する暴力であるという主張や、妊娠中絶、精神疾患乳がんを結びつける試みは、この戦略のすべての部分です。そして、それは妊娠中絶反対派が女性のことなど気にかけていないという主張を却下するように仕組まれています。妊娠中絶反対運動は、恐るべき敵であり続けます。これが予見できる将来に変わるという徴候はありません。
 中絶権擁護団体は喪失と進行中の脅威に直面して、自身の戦略と政策について批判的な見方をしています。私は、現在、有色人種の組織やその支援者の女性によって促進されている、リプロダクティブ・ジャスティスというアプローチが、失われたものを取り戻して、新しい攻撃に応じて、これまでなかったリプロダクティブ・フリーダムの完全な充実を得るために最高の可能性を提供すると主張します。それは、私たちを前進させるために最もダイナミックで包括的な展望です。

 本稿は米国の事柄に集中していますが、その政策の悪影響や危害は世界中至る所で経験されています。米国の反妊娠中絶製作は、世界的な緘口令(global gag rule)を再び課すること、国連人口基金への3400万米ドルを打ち切りその資金を国内の禁欲のみのプログラムに向けたこと、女性の健康と権利に関するすべての国際会議で中絶反対の課題を課すことを含む行動を通して、世界中で何百万もの人々のサービスと健康を蝕んでいます。

Abortion Access in the US
米国での妊娠中絶へのアクセス
 ロウ対ウェード判決は、女性の健康と生命にとって大きな勝利でしたが、それはすべての女性が中絶の権利を手に入れることへのはじめの一歩にすぎません。アクセスは、未完成の課題のままでした。妊娠中絶が合法的になったとたんに、攻撃は始まりました。 ロウ対ウェード判決は、中絶反対派に対して衝撃を与えましたが、それ以降、中絶を制限しようとする何百もの法案が提案されました。そのような中絶反対派の動きはロナルド・レーガン大統領がこれまで政界では脇役に過ぎなかった保守系右派を権力の座に押し上げた1980年代から追い風を受けて活発になりました。中絶と同性愛者の権利に反対することは、右派の活動の反女性、反セクシュアリティ課題の中心になりました。反中絶運動は、中絶へのアクセスを攻撃することで、法的な権利を削り始めました。その動きは、目立ち、潤沢な財源を持ち、福音主義キリスト教原理主義)やカトリック教会を基盤にしていました。レーガンは、反中絶やその他の保守組織の支援によって大統領に当選しました。その代償として、彼の政権は、彼らが前例のないほど、政治権力や資源を利用できるようにしました。連邦の資金は、反中絶カウンセリングセンターや禁欲しか教えない性教育をする宗教組織に流されました。この時期を通じて、中絶や家族計画をするクリニックを攻撃するという違法な行動も強まりました。

Roe v Wade
ロウ対ウェード判決
ロウ対ウェード判決は、米国連邦最高裁判所の画期的な判決です。1970年、テキサス州民のNorma Leah McCorveyさんは、強姦の結果、妊娠したので妊娠中絶を受けようとしました。当時、中絶は全面的に禁止されていないにしても、通常は、妊娠している女性の生命が危険にさらされている場合に限定されていました。弁護士Linda CoffeeさんとSarah Weddingtonさんは、テキサス法がMcCorveyさんの憲法上の権利を侵害しているという訴訟を起こしました。訴訟では、テキサス州法を代表するHenry Wadeダラス郡検事が被告となり、McCorveyさんはその後匿名で訴訟を進めることになりました。テキサスの裁判所ではRoe v Wadeに賛成した判断をして、その後最高裁判所に上告されました。1973年までに裁判所は、テキサス州法がロウさんの権利、とりわけプライバシーの領域を侵害していることを確認しました。 プライバシーの領域には、結婚、避妊、子育てが含まれるだけでなく、女性が妊娠を終わらせることを含めて、子どもを持ちことについての決定を含んでいます。

In 2004, she filed a petition, asking that the Supreme Court to reopen her case and overturn its 1973 decision. Her petition was denied.
しかし、McCorveyさんは、1980年代までに立場を変え、自分の弁護士は、テキサス法に疑問を呈するために自分を利用したのだと主張するようになりました。彼女の著作の冒頭では、私はロウであり、レズビアンであり、Connie Gonzalesと関係を続けていると明かしています。同じ年に、プロライフの活動者と対決して以降、McCorveyさんはキリスト教徒に転向し、彼女自身がプロライフの活動者になりました。2004年には、彼女は彼女の事件の1973年の最高裁判決が再審に付されて覆されることを求める嘆願書を提出しました。彼女の嘆願書は認められませんでした。

Sources: Mc Bride, Alex. “Roe vs. Wade (1973)” in The Supreme Court History. Retrieved from PBS on 7 April 2008 http://www.pbs.org/wnet/supremecourt/ rights/landmark_roe.html; “Roe v Wade: Key US abortion ruling”(December 10, 2004) Retrieved from British Broadcasting Corporation on 7 April 2008. http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/49315.stm; “Court rejects motion to overturn Roe v. Wade” (September 14, 2004) Retreived from CNN on 7 April 2008 http://edition.cnn.com/2004/LAW/09/14/ roe.v.wade/index.html 

1994年以降、妊娠中絶のケア関係者7人が殺害され、17件の殺人未遂41件の爆破、175件の放火事件が起き、何千ものピケや、リプロダクティブ・ヘルスサービスを提供するクリニックへの脅迫がありました。

 その時から、妊娠中絶の反対者たちは、二重の戦略をとるようになりました。短期的には、私たちが知っていることですが、中絶へのアクセスを浸食するよう働きかけをして、中絶を非合法なものとするという長期的な目標を達成するために、ロウ対ウェード判決を弱めて最終的には覆せるよう、州や連邦レベルで、立法の努力を支援しました。それは実現しそうになっています。連邦最高裁判所ではあとたった1票あれば結論は覆るところまできています。最高裁判事の氏名権は、大統領選挙の最大関心のひとつです。

 中絶反対派の2つの戦略は、補強しあっています。禁止と規制を求めるキャンペーンは、更なる規制や女性は妊娠を終わらせることについて自身で決定できないとすべきというアイディアを支援します。さらに、負けた闘いさえ、中絶を否定的な言葉で語り、汚名を補強します。ロウ対ウェード判決以降35年間、妊娠中絶へのアクセスに対する攻撃は、適法なものも、違法なものも、時に暴力的なものも含めて、続けられました。1994年以降、妊娠中絶のケア関係者7人が殺害され、17件の殺人未遂41件の爆破、175件の放火事件が起き、何千ものピケや、リプロダクティブ・ヘルスサービスを提供するクリニックへの脅迫がありました。また、政府による資金提供や妊娠中絶手続きの禁止、訴訟と、妊娠中絶へのアクセスを減らす政府の方針など、制限的な立法がなされるという継続的な逆襲もなされています。下記の「サラ」の状況は、このような多面的な浸食を物語っています。

「サラ」はフルタイムで働く31歳の母親です。月1,000米ドルの稼ぎがありますが、健康保険には加入していません。彼女が妊娠15週で妊娠中絶を希望しましたが、彼女の故郷のアラスカ州では、州に3 人の妊娠中絶施術者しかおらず、その誰もが14週以降の妊娠中絶をしないため、中絶をすることができませんでした。彼女はお金を借りて、飛行機で何百マイルも離れた別の州に行き中絶をしました。

「サラ」の場合は、運よく、草の根の中絶基金からの資金援助を得て、また彼女が滞在できる場所を提供した友達がいたため、幸運にも、そのような障壁を乗り越えることができました。合州国には、毎年サラのような女性が、すべての年齢層、宗教、人種、民族に、在監の女性、軍隊に、非婚・既婚を問わず、中絶を利用するために多くの障壁を乗り越えようとする女性たちが大勢います。しかし、その多く成功するわけではありません。

中絶への資金拠出の禁止は大きな経済的障壁として有効です。50州中33州は、連邦政府の政策にならって妊娠中絶についての拠出を拒否しています。妊娠中絶の資金拠出をする17の州でさえ、非現実的なほど厳しい適格基準を設定し、矛盾したことに、中絶の費用を支払えない多くの貧しい多くの女性たちを排除しています。全体での妊娠中絶率は下がっていますが、「サラ」のように、他の必需品のためにつかわなければならないお金を中絶のために利用せざるを得ず、子どもを育てる経済的余裕のない、貧しく低収入の女性の中絶率は増加し続けています。

他の制限的な法律や方針も、直接中絶へのアクセスを困難にし、妊娠中絶サービスの利用に長期的な悪影響を及ぼしています。妊娠中絶を担当できる医療従事者の数は着実に減少しました。それは多くの相互に関連する問題に起因していました。つまり、医療従事者への攻撃、中絶にまつわる汚名、クリニックに対する不必要で高額な規制に伴う責任保険のための高い費用、医学部のトレーニングの不足などです。その結果、合州国の87パーセントの郡には、妊娠中絶ができる医療従事者がいません。35パーセントの女性が、このような郡で暮らしています。

若い女性には、妊娠中絶を受ける条件とされる親の同意や通知を義務づけている法律という更なる障壁が立ちはだかります。事前カウンセリングと中絶の間に一定の待機期間を義務付ける法律、いわゆる「部分出産」中絶の禁止、病院に拠点を置くサービスの減少があいまって、安全で合法な妊娠中絶は実質的には不可能になりえます。

Partial Birth Abortion Ban
妊娠後期中絶禁止
2003 年11月5日に、合州国のジョージW.ブッシュ大統領は2003年の部分出産中絶禁止法に署名しました。そして、それは第二トリメスターの妊娠中絶手術の実施を禁止し、この段階で中絶を実施した医師に2年の投獄と罰金を課しました。この禁止は、95パーセント以上の第二トリメスターでの妊娠中絶において使われる子宮内容除去術と関係していると言われています。この方法では、超音波検査をして、抗生物質を投与した後に、安全に頸部を広げて、真空吸引法の場合も拡大と掻爬の場合もどちらの手順によってでも、後で子宮内を空にします。
米国家族計画連盟、Center for Reproductive Rights, the National Abortion Federation, the American Civil Liberties Union, American College of Obstetricians and Gynecologists, and the American Nurses Associationなど、女性団体、市民社会団体や医学組織は、この禁止に反対して、裁判所でも挑戦をしました。
法律な要約としては、米国家族計画連盟が論じているように、「この法律は、したがって、どんな場合でもD&E(子宮内除去手術)を実行することについて医者を萎縮させ、時に医師らに刑事訴追を避けるために、たとえそれが最高の医学的判断に反することを意味するとしても、実践を変更させることを強いるでしょう。いずれにしても、女性の自由は憲法に反して侵害されて、妊娠中絶を選択する権利は過度に負担をかけられます。」しかし、残念なことに、2007年に米国連邦最高裁判所は、5-4の票決で禁止法を支持しました。

Sources: “President Bush signs Partial Birth Abortion Ban of 2003” Retrieved from the United States White House on 7 April 2008 http://www.whitehouse.gov/news/releases/2003/11/images/20031105- 1_p35410-21-515h.html; Planned Parenthood Federation of America. “Summary of Brief Filed by Planned Parenthood In the U.S. Supreme Court in Gonzales v. Planned Parenthood Federation of America, No. 05-1382.” Retrieved from PPFA on 7 April 2008 http://www.plannedparenthood.org/issues-action/abortion/ gonzales-brief-14390.htm; For medical terms and procedures, see WebMD, http://webmd.com  

過去8年間、中絶反対の方針が、ブッシュ大統領の課題の最前線にありました。彼は、高い地位の閣僚、機関の役職、連邦裁判官、最高裁判所を妊娠中絶と避妊に反対する人々で満たしました。ブッシュは連邦中絶禁止法(ビル・クリントン大統領は拒否しました)に署名しましたが、最高裁判所によって憲法に反するとすでに宣言されました。彼のこのような持続的な中絶への攻撃は成果をあげました。強い法的な前例の存在にもかかわらず、2007年に新しく構成された法廷は、部分出産中絶禁止法を合法であると宣言しました。
妊娠中絶に対する攻撃は、1960年代、1970年代の女性運動や市民権や福祉権実現に向けた闘いによって得られた成果を反転させる非常により幅広い取組みの一部をなしています。共和党が大統領と議会の実権を握っていたときには攻撃がエスカレートしましたが、合法である期間中攻撃は連続的になされました。その結果、特に米国で、そして、世界中の至る所で、とくに最も弱い立場に置かれた女性にとって、妊娠中絶やその他のリプロダクティブ・ライツは深刻な危機に陥れられました。

Resisting the Anti-Abortion Movement
妊娠中絶反対運動に抵抗すること

中絶の権利の実施は、合法化後の全面的な攻撃に準備できませんでした。1970年代後期に再登場した運動は、中絶権への多面的な攻撃に反応して形づくられました。妊娠中絶を合法的にするための以前の運動は、女性解放の幅広い闘いの文脈の中にありましたが、ロウ対ウェード判決以降の運動は、闘いの焦点を狭めてしまいました。法的な中絶の権利を擁護することが唯一の優先事項になってしまいました。選択やプライバシーという言語やイデオロギーが、女性の権利や中絶権にとって代わりました。このアプローチは、より広い訴えかけをして、支持基盤を広げ用という望みで採用されました。確かに、このアプローチで社会経済的福祉の課題について保守的な立場の人を取り込み、右派を切り崩し、一時的には成功したものの、大きな問題を残しました。

中絶権を個人の選択とプライバシーの問題とすることはアクセスの問題をおきざりにしました。この課題はクリントンの大統領当選がロウ対ウェード判決が覆されるという脅威から一時的な休息を提供した1990年代まで残りました。この期間中、アクセスの異なる面に集中した新しい組織が作られました。より多くの医師の訓練、先端の実践ができる臨床医を含む医療従事者の増加、既存の医療従事者への支持の整理、低収入の女性や少女への直接的な中絶資金の提供、公的資金の復活のアドボカシー、中絶をした女性を支持するカウンセリングの提供などです。他の展開としては、課題を広げて、有色人種のコミュニティ、LBGTQ運動、若者たちなど新しい人たちと同盟を作ることに向けられました。

この組織化によって重要な成果がありました。たとえば、私の活動が依拠していた、中絶資金のための国のネットワークの草の根のメンバーは昨年260万ドルを集めて、直接的な財政援助を23,000人の女性に提供しました。妊娠中絶の選択権の実現を求める医学生団体は10,000人の会員を持ち、123の支部があり、トレーニングの機会を拡大することに成功しています。他の組織の進行中の努力を通して、多くの家族医療医師は、現在では妊娠中絶を提供しています。しかし、全体的な傾向は、覆されていません。妊娠中絶へのアクセスは下がり続けています。特により若い女性の間では、妊娠中絶に対する規制に対する支持が増えています。そして、中絶権サポーターは防御モードにはまり、可能な基盤を確保する小刻みな方法で闘わなければならなくなっています。私たちは力とともに、長期的展望と展開をもって大きな政治的な転換をしなければなりません。

From Choice to Justice
選択から公正さへ

何十年もの間、「選択」という枠組みや単一課題での中絶方針に対して不満がありました。批評の最前線にいたのは有色人種の女性であり、選択という狭い課題は、女性の生殖についての体験の多様性も、リプロダクティブ・フリーダムを構成する課題の幅広さも反映していないと主張しました。

彼女たちの異議の根底にあるのは、女性の人生の中での生殖が、大部分において、人種や階級によって決定されるという理解です。米国の資本主義的文脈では、選択という考えは、売りに出されている物が選択される市場を思い起こします。この新自由主義の概念は、個人の範囲内で権利を位置づけ、その権利を実行するために必要な社会的コンテクストや状況をおおい隠します。
しかし、社会的文脈を無視した分析は誤っています。個人の決定は社会的な支持(例えば住宅、健康管理と福祉給付金)なしで実行されることができません。そして、それらは右派によって侵食されました。「選択」派(プロチョイス)は、基本的な生存のニーズを満たすのに苦労している女性に語りかけませんでした。このような女性には、あまりにしばしば、母であることも妊娠中絶も、手の届かない所にあります。妊娠中絶を選択の問題にはめ込むことは、中絶の権利のチャンピオンとみなされる大部分が白人の中流階級の女性と、世界中で規制の矢面に立つ有色の低収入の女性との格差を補強してしまうだけです。
選択という言葉は、避妊を含む新しい生殖技術の分野、女性の健康と潜在的強制に対する懸念を静めるためにも用いられました。たとえば、Norplantは 25年前に米国で導入された新しい避妊具でした。主流の女性団体たちからは、女性の避妊の選択肢の拡大として比較的無批判に受け入れられました。Depo-Proveraも、女性により大きな選択を提供するとみなされました。女性の健康団体にとって、妊娠中絶と避妊の反対者の利益になるようなことをしたと責められることなく、これらの避妊方法の批判を提起することは難しかったです。

狭い枠組みで捉えられてしまった選択の課題は、運動の人種的な、階級的な分断を恒久化し、脅しに抵抗して、決して成し遂げられない権利を得るために前進する能力を弱めました。今日、多様な政治的な展望からの擁護団体は、「選択」という考え方はもはやは手放さなければならないことに同意します。しかし、それに替わりうるものについては合意を見ていません。より人気がある新しいフレーミングのいくらかは、妊娠中絶を掲げることを断念するようですが、問題を含んでいます。多くの政治指導者と権利擁護団体は、バラク・オバマを含め、望まない妊娠や中絶は、避妊へのアクセスを増加させることでなくせると論じて「予防優先法」の支持をしようと結集しています。もちろん、より避妊にアクセスが利用しやすくなることは望ましいことです。しかし、それが安全で合法や中絶のアクセスへの要求を、あまり侵入的でなく性感染症をも予防する避妊という遮断方法の支持として、女性が自身の生殖にかかわる生活をコントロールするために利用できる手段として、置き換えることはできません。女性が望まないときに妊娠する限り、中絶は女性の生殖についての安全網の一部であり続けるのです。  
予防の実現に向けての議論では、ヒラリークリントンなどの中絶の権利の支持者の中には、中絶を「嘆かわしくて悲劇的な選択」として、中絶を「安全で合法だが、まれなもの」にしなければならないと語っています。このように妊娠中絶は「必要悪」と語られます。しかし、この立場は、悪意がないにしても、中絶の否定的部分を強調し、中絶の反対者に攻撃材料を与えてしまいます。また、このような立場は、多くの女性たちにとって妊娠中絶が命を救うものであり、本当の悲劇は女性に意志に反して子どもを産まされるという事実を見逃しています。
リプロダクティブ・ジャスティスに基づく政策は、妊娠中絶を本来あるべきところに置きます。つまり、女性の人生、人権、社会的公正の一部です。妊娠中絶は、リプロダクティブ・フリーダムの中心でもなければ、その蚊帳の外でもありません。中絶の権利は、女性のニーズの全体的な理解の一部です。課題を結びつけることで、リプロダクティブ・ジャスティスには、新しい支持者たちを、リプロダクティブ・ジャスティスを勝ち取るための闘いに引きつける力あります。


歴史的に、有色の女性たちは、選択の枠の外側にリプロダクティブ・セクシュアル・ライツ実現のために組織化しました。自身の組織と連合をつくって、自分たちのコミュニティのニーズを強調するためにリプロダクティブ・ライツを再定義しました。全ての人にかかわる社会・経済的不平等と人種差別は、そのコミュニティとその中での女性の人生を形づくります。彼女たちには、すべての地域で、不相応な貧困率、保健医療サービスと情報へのアクセスの欠如、高い暴力の発生率と、よりひどい健康状態があります。
その例としては、合州国での新しいHIV事例の大多数がアフリカ系アメリカ人とラテン系の女性に起きているという事実が挙げられます。先住民の女性たちは、生殖管の感染症の割合が非常に高いです。ラテンアメリカ人女性は、子宮頸がんのわりあいが高いのです。アジア系アメリカの女性は、がんによる死亡が上昇している唯一のグループです。従って、これらのコミュニティの女性たちは、リプロダクティブ・ライツと公正さを定義しているように、彼女たちは、リプロダクティブ・セクシュアル・フリーダムを実現するために不可欠な幅広い条件を実現することに焦点を当てます。リプロダクティブ・ジャスティスは、リプロダクティブ・フリーダムについて、人種、階級、ジェンダー、生活での文化的側面を含めて、幅広い理解を提供します。
リプロダクティブ・ジャスティスの政策は、人口抑制政策から中絶の権利を分離し損ねて、もう一つのフェミニストの歴史的な分裂を克服します。母親に必要な支持を提供しないことによって、低収入の女性が子どもを育てる可能性を積極的に蝕む政策を通して、人口抑制政策は、有色女性の生殖について価値下げをします。政府による子育ての補助金の欠如と例えば小さな子どもがいる場合にも家の外で働くことを求める抑圧的な福祉政策は、低所得層の女性たちが合州国でそのような家族を支援をすることを困難にしています。このことによって、低所得層の人たちは子どもをもつものとは考えられていないとの露骨なメッセージも送ってもいるのです。

関連するものの、より直接懲罰的なアプローチで、政府は、ますます、妊娠した女性を犯罪者とするために、「胎児の権利」を使いました。200人以上の女性が、妊娠中の薬物使用や、伝えられたところでは、胎児の健康を脅かす振る舞いのとがで起訴されました。これらの起訴は、不相応にも、政府の詳細な調査や干渉を受けやすい、都市部の公共病院で医療を利用する可能性が高い、有色の低収入の女性に影響を及ぼします。「出生前の犯罪」で起訴された大多数の女性たちは、貧しいアフリカ系アメリカ人です。起訴されるとの脅威から、このような女性たちは出生前のケア、出産時の医療、妊娠終了後のフォローアップ治療を求めることができません。その政策によって、不健康な赤ちゃんと女性が増えるだけです。公衆衛生や女性の権利の擁護団体は、ゴールが女性と子どもたちの健康のための手段というならば、その方法がまったく間違っているだろうと指摘します。服役するよりもむしろ薬物治療が提供されるべきでしょう。実際には、どこにも妊娠した女性が利用できる治療の選択肢はほとんどまったくありません。

これらの課題、つまり有色の女性たちの、リプロダクティブ・ライツについての考え方の中心にあるものは、これまで、主流のプロチョイスの課題の一部でありませんでした。National Black Women’s Health Project, Women of All Red Nations, the National Asian Women’s Health Organisation は、強制的な不妊化やその他の強制的な避妊法という課題への関心の欠如に異議を述べました。彼女たちは、主流のプロチョイス運動が子どもを持たないことだけを強調することを拒絶しました。世界中で多くの女性たちにとって子どもを持つ権利が攻撃をうけているのです。このようなグループは、リプロダクティブ・フリーダムの課題の中心に、そのような権利と人口政策への反対を位置づけました。

Conclusion
結論

2008 年の合州国大統領選挙は、国家的リーダーシップの重要で積極的な変化の機会を提供します。私は民主党の先頭走者には批判的ですが、民主党の共通基盤が公式に合法な妊娠中絶を支持すると指摘していることは重要です。対照的に、共和党はそれをひっくり返すことに明らかに専念しています、そして、ジョンマケイン(2008年の大統領の指名候補者が時々穏健派の有望な共和党員と呼んだ、議会の彼の記録は異なる物語を語ります。彼は、家族計画のための資金提供に反対して一貫して投票をしました。連邦従業員健康保険を中絶の費用に適用することにも反対し、強姦と近親姦の場合でさえ妊娠中絶のために合州国が資金提供することに反対しました。このような制限的な政策を継続させる恐れがあることに加えて、彼が大統領になれば彼には諸機関と最高裁判所裁判官を含む裁判官の指名の多くの機会もできてしまいます。

投票で民主党が強さを示しても、ロウ対ウェード判決の成果は、選挙の後も脅されたままでしょう。競争相手ヒラリークリントンと バラクオバマは、妊娠中絶に関して穏健で安全でした。両者とも妊娠予防を促進しているだけでした。一方、共和党の指名候補者ジョンマケインは、この課題についてキリスト教右派に追随しています。Photos from Wikimedia Commons

これと同時に、以上のように、妊娠中絶の政策は、政党の路線を越えます。民主党を選ぶことさえ、言うまでもなく中絶の権利を守るためには適切ではなく、完全なリプロダクティブ・ジャスティス課題の実現にも不適切です。
私は、リプロダクティブ・ジャスティスの運動の創造が失われたものを回復させ、新しい攻撃に対応して、私たちがまだ決して手に入れたことがない完全なリプロダクティブ・フリーダムを得るために最高の望みであると思っています。それは、私たちを前進させる最もダイナミックで包括的な展望です。それは、他の健康、人権と社会的公正の運動とつながっているので、リプロダクティブ・フリーダムのこの広い展望は中絶の権利の闘いに新しい連帯者を作る機会を提供します。したがって、リプロダクティブ・ジャスティスが、正しいことであり、勝つための唯一の道であるので、合州国でリプロダクティブ・ライツの中心的な枠組みになることを希望します。

Marlene Gerber Fried is Professor of Philosophy at Hampshire College and Director of the Civil Liberties and Public Policy Program (since 1986), a program for reproductive rights education and activism. She was founding president and continues on the board of the National Network of Abortion Funds and the Abortion Rights Fund of Western Massachusetts. She is also on the board of the Women’s Global Network for Reproductive Rights. She has written and lectured widely about abortion access and reproductive freedom and justice and was part of the Johannesburg Initiative. She edited, From Abortion Rights to Reproductive Freedom: Transforming A Movement, co-authored with Jael Silliman, Loretta Ross and Elena Gutiérrez, Undivided Rights: Women of Color Organize for Reproductive Justice, November, 2004, and co-authored the chapter on abortion in the 2005 edition of Our Bodies Ourselves.

Endnotes
1 Vicki Saporta, “Observing Provider Appreciation Day,” http://www.rhrealitycheck.org/node/6749.
2 National Network of Abortion Funds (2004) Abortion Funding: A Matter of Justice, p15.
3 Until 1994, the only exception was a threat to the life of the pregnant woman. In 1994 the law was changed to include exceptions for rape and incest.
4 Rachel Jones, Jacqueline Darroch and Stanley Henshaw (2002) “Patterns in the Socioeconomic Characteristics of Women Obtaining Abortions in 200-2001,” Perspectives in Sexual and Reproductive Health, 34(5): 226-34; pp229, 231.
5 “Facts on Induced Abortion in the United States,” Guttmacher Institute, January, 2008. Available at: http://www.guttmacher.org
6 Hospital-based services have also steadily declined, a trend exacerbated by the trend of public hospitals and insurance plans that being merged with those that are religiously affiliated. Birth control, sterilization, abortion, infertility services and counseling for HIV/AIDS and other STIs may be banned by hospitals following religiously-based health restrictions. For more information, www.mergerwatch.org
7 Fried and Clarke (2000) “Expanding Abortion Access: The U.S. Experience,” in Advocating for Abortion Access: Eleven Country Studies. Edited by Klugman and Budlender. Witwatersrand University Press, Johannesburg.
8 Silliman, Jael and Anannya Bhatcharjee (2002) Policing the National Body: Race, Gender and Criminalization, South End Press, Boston, xi
9 See Betsy Hartmann, “Abortion and the Politics of Prevention,” http://www.zmag.org/sustainers/content/2006-11/07/hartmann.cfm
10 Saletan, William (January 26, 2005) “Safe, Legal, and Never,” http://slate.msn.com/id/2112712
11 Welfare Reform in the US, passed by the Clinton administration in 1995 is another form of eugenics since it prohibits increases in payments to poor families even if they have more children.
12 For more on this see, Silliman et al (2004) Undivided Rights: Women of Color Organize for Reproductive Justice, South End Press, Boston.
13 For more on Reproductive Justice, See: Loretta Ross (Spring/Summer 2007) “Understanding Reproductive Justice,” In Political Environments, http://www.sister.net ; Asian Communities for Reproductive Justice, “A New Vision for Reproductive Justice,” http://www.reproductivejustice.org; and “Expanding the Movement for Reproductive Justice” http://www.emerj.org

 



マレーネガーバーフリードは、ハンプシャーカレッジのPhilosophyの教授とCivil LibertiesとPublic Policy Program(1986年以降)(産む権利教育と行動主義のためのプログラム)のディレクターです。彼女は創立大統領で、Abortion Fundsの国立Networkと西マサチューセッツのAbortion Rights Fundの板の上で続けます。彼女は、ReproductiveライツのためにWomenのGlobal Networkの板の上にもいます。彼女は書いて、妊娠中絶アクセスと生殖の自由と正義について広く講義をして、ヨハネスバーグInitiativeの一部でした。彼女は編集しました、Reproductive FreedomへのFrom Abortion Rights:A Movementを変えることは、ヤエルシリマン、ロレッタロスとエレナGutiでrrez(Undividedライツ)を共同執筆しました:2004年 11月に、Reproductive司法省のためのColor Organizeの女性、そして、Our Bodies Ourselvesの2005の版で、妊娠中絶に関して章を共同執筆しました。