AWID国際フォーラム参加報告

行った人 麻鳥澄江・鈴木ふみ

 11月の中旬、南アフリカケープタウンでの2つの会議に参加してきました。日本からケープタウンまでの直行便はなく、香港、ジョハネスバーグで乗り継いで丸一日以上かけての移動でした。中継地の香港は深夜の乗継で、夜景がとてもきれいでした。(そういえば今年12月13日には、香港で初めてのプライドパレードが開催されるようです。http://hkpride.net)到着したケープタウンは南半球なので初夏の陽気なのですが、天候が悪いと船の難所と呼ばれるだけあってものすごい強風でした。

WGNRR
 ケープタウンでは、11月11日〜13日の3日間は、WGNRR(Women’s Global Network for Reproductive Rights、ただいま日本語版ホームページを作成中です、http://www12.ocn.ne.jp/~allies/space/newpage34.html)の会合に参加。アフリカ地域の会員の会合でしたが、アフリカだけでなく、オランダ・アムステルダムや新事務所のフィリピン、アメリカ合州国、メキシコなどから総勢40人近くが集まりました。会議の内容は、個別のテーマについての各国での体験の共有と、WGNRRのメンバー間の連携や通信手段や組織や資金(ドナー)関係、事務所の北から南への移動や存在意義を含めた幅広い課題を扱いました。
 個別テーマについては、1日目は「女性に対する暴力」をグループに分かれて話し合い、今年2008年の「女性と健康国際行動日」のテーマである紛争・戦争とリプロダクティブ・ライツも大きなテーマになりました。阻止連ニュースの表紙にもなった今年の女性と健康国際行動日のパンフレットはアフリカの会員が中心になって作成したものです。2日目は婚姻内レイプや女性用コンドームなどの課題をグループで取り上げ、提言書を作成。3日目は安全な中絶をテーマにして、2007年ラテンアメリカ地域で合法化(初期限定ではあるが)に成功したメキシコシティの経験を共有した後、グループに分かれて、中絶法改正やメディカル・アボーションなどを話し合いました。
 次のWGNRRの地域会合は、2009年中国で開催予定です。

AWID
 翌日11月14日〜17日までの4日間はAWID(Association for Women’s Rights in Development)の国際大会。今回のテーマは、「The Power of Movements (女性運動の力)」でした。AWIDの国際大会はほぼ3年に1度の開催で、前回2005年のタイ・バンコクに参加して良かったのでリピーターになった人にも出会いました。全体の参加者は約2000人、分科会は100以上と活気のある大会で、会場には女性団体のブースだけでなく、各団体のビラや報告書などがところ狭しと並べられていました。
 開会式では、世界各地のデモをはじめとする運動のスライドが2秒ずつ大画面に映し出され、「優生保護法改悪阻止」のデモの写真も流れました(麻鳥はお手洗いに行っていて見逃して、残念至極でござる)。舞台では、アフリカを代表してケニアからの発言のほか、障がい女性、レズビアン、先住民の女性からそれぞれ発言があり、大きな拍手が会場を包みました。開会式の最後には、煙に見えたのですが、なんとも心休まる芳しい香りが漂い出し、生のハーブを舞台に撒いて敷き詰め、その舞台の上で南アフリカの先住民の女性たちが歓迎の踊りを舞ってくれました。静かで深い場面でした。

 毎日、2時間の全体会と90分の分科会があり、同時にいくつもある分科会のどれに参加しようか、いつも迷ってしまうほど、参加したい分科会プログラムが並んでいます。昼食時には公式・非公式にミーティングが開催され、国際レズビアン・ゲイ協会ILGAのミーティング、世界社会フォーラムWSFのミーティング、ジェンダー平等と取り組むGEARのミーティングに参加しました。いつもは電子メールでしかやり取りしていない人たちと出会えました。
 2日目の15日にはケープタウンの市内へデモ行進(The One in Nine Campaign)。参加者全員に紫色のTシャツが配られ、初夏の風吹く街中へ繰り出しました。「女性に対する暴力、特に加害者の不処罰に対して社会問題として改善を図れ」をテーマに、州政府まで行進し、州政府の入り口前で抗議行動。参加者のプラカードには獄中の女性の名前を書いたものも多く、麻鳥のは「アウンサンスーチーさんを自由に!」でした。元気な女たち800人と約1時間、共に歩きました。日中なのに街は妙にひっそりしているなあ、と感じました。
 各分科会のテーマは、原理主義や、安全な中絶に関するものが多かったという印象です。原理主義については、主催のAWIDが原理主義に対抗するための3分冊の小冊子を配布して力を入れ、イスラム社会での女性運動のグループが多くの分科会を主催していました。石打の刑(Stoning)や名誉殺人などに反対するキャンペ−ンや分科会も多く、廃止を求める100万人署名キャンペーンも展開されていました。
 人工妊娠中絶については積極的に参加しました。インターネットで中絶薬を配送する活動の専従スタッフとは何度も会って話す機会がありました。そのメディカル・アボーション(中絶薬)の分科会や、妊娠中絶についてのアドボカシーの分科会などに参加。それらの中でアジア地域の中絶法の変革は運動の力よりも別の要因があることや、アジア(このセッションでは主にインドを指していましたが)の女性運動が、プロ・チョイスの主張を強化するというよりは、生殖技術に反対するという主張のなかで結果的にプロ・チョイスの立場を弱めてしまったという発言もあり、考えさせられるものがありました。

 レズビアンの集会も活気にあふれていました。アフリカ地域のレズビアンの分科会、アラブ地域でのレズビアンの分科会には参加し、南アジアでのレズビアンの分科会もありました。ヘテロ以外は許されない国もいまだに多いのが現実です。それにしても、たくさんのレズビアンが、世界の女性運動の原動力になっていることを改めて確認できました。
 その他、女性運動の中での世代間コミュニケーションの行く末を考える会や、女性運動への資金の課題などさまざまな分科会に参加できました。
詳しくは2009年1月17日(土)の報告会で。お楽しみに。