女と健康国際行動日 、「性と生殖に公正さを! 人口管理に反対する

毎年5月28日は、女と健康国際行動日です。
このキャンペーンの今年のテーマは、「性と生殖に公正さを! 人口管理に反対する。」です。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツという考え方や言葉について、人権の普遍性の視点からさらに推し進める考え方として、リプロダクティブ・ジャスティス(公正さ)という言葉が最近多く使われるようになりましたが、今年のキャンペーンは、リプロダクティブ・ジャスティスを位置づけ、これに抑制的な人口管理について改めてNOを突きつける内容です。リプロダクティブ・ヘルス/ライツを国際的に広めるきっかけになったカイロでの国際人口開発会議の行動計画をさらに発展させるために、行動計画に潜む問題点を発展的に乗り越え、先進国の主流の運動が見過ごしてきた立場の女性たちにとっての、すべての女性にとってのリプロダクションを考える基点となれば幸いです。ちなみにこれまでのキャンペーンのテーマは下
の通りです。

1991 良質なヘルスサービスを求めて、女性が「人間」として対応され、女性たちの尊厳を尊重すること

1992 10代の妊娠

1993 中絶、私たちは沈黙を続けない

1994 安全で合法な中絶へのアクセス

1995 貧困の女性化を阻止し、女性の健康を促進する。

1996 8年間のキャンペーン 更なる前進を求めて

1997 良質なヘルス・ケアへのアクセス それは女性の権利である

1998  不明

1999 保健市場の民営化の中での政府はもっと説明責任を、人々を優先すべき

2000 女性に健康を、すべての人に健康を

2001 女性はAIDSを超えられる

2002 国際貿易協定と女性のヘルス・ケアへのアクセス

2003 政府は女性の健康に責任を! プライマリ・ヘルス・ケア(基礎的保健医療)と女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ライツ 今日の到達点

2004 女性の健康にとって危険な保健セクター改革 

2005 女性に対する暴力 世界の健康の緊急事態

2006 私たちを束縛する連関を切断する、HIV/AIDSの女性の脆弱性をなくすための行動の呼びかけ

2007 安全な中絶は、女性の命を救う

2008 紛争をやめ、女性の身体への侵害を食い止める。

2009 リプロダクティブ・ジャスティス(性と生殖に公正)の推進を! 人口管理にNO!


WGNRRの活動等については下記をご覧ください。
http://www12.ocn.ne.jp/~allies/library/index.html

WGNRR 2009年の行動の呼びかけ
2009年の行動の呼びかけ
5月28日「女と健康 国際行動日」


Women’s Global Network for Reproductive Rights(リプロダクティブ・ライツ実現のための国際女性ネットワーク)

提供・翻訳:すぺーすアライズ

メール:allies@crux.ocn.ne.jp

HP:http://www12.ocn.ne.jp/~allies/

(表側)

私たちが推奨することは次のとおりです。



・ 私たちの状況、現実、ニーズとの関連でICPD(国際人口開発会議行動計画)について、私たちの周囲の人々や一般市民を教育すること。

・ ICPDの推薦事項を国の政策や立法に盛り込むよう政府に要求すること。

・ 私たちが政策提言する際には、文化的宗教的信念やICPDの目標を台無しにする実践の課題を明示して掲げ、政府が、ICPDの目標に沿って、公的・非公的教育と、貧困削減と、リプロダクティブ・ヘルス(保健医療)サービスと、女性と少女の権利としてのリプロダクティブ・セクシュアルライツ、これらを擁護する法と司法システムを通して、取り組むよう要求すること。

・ このWGNRRの宣言を北京でのアジア太平洋地域ICPD+15会議(2009年 秋)に届けること。WGNRRのメッセージは、人口とは余剰・過剰の問題ではなく、権利を剥奪された女性に降りかかる課題であり、資源を利用できないあまりにも多くの人が抱えている課題です。

・ ICPDの監視と評価のシステムや、政府機関とNGO報告の中で、コミュニティや主要メディアを通して、ICPDの実施・進展状況を測るため、文化的宗教的実践チェックを導入すること。そして、都市と地方の貧困地域で、先住民の地域で、紛争地域で、そこでの女性と少女の性と生殖の状況を強調すること。

・ 私たちの運動計画の着目点、政策提言の知恵を出し合い、「パートナーシップ」など他の活動との協力関係を通して資金集めを助け合うこと。資金を供給する団体や機関での交渉の中で私たちの検討課題を強調すること。

・ 人口についての資金と資源は、リプロダクティブ・ジャスティス(性と生殖の公正さ)の実現に向けられるべきです。それは、貧困削減と文化変革としてリプロダクティブ・ライツの課題に取り組む開発プログラムに向けられるべきです。つまり、都市と地方の貧困地域の、先住民社会の、紛争地域の、最も緊急かつ直接に必要性が高い女性と少女たちに、使われるべきです。



(裏側)

性と生殖に公正さを! 人口管理に反対する。

Call for Action 2009 (WGNRRより)



 世界の人口は、いまや67億人です。今後43年間で、25億人増加すると見積もられており、2050年には92億人に達します。この増加人数分の25億人は、1950年の世界人口に相当します。研究によれば、「途上国」の人口は2007年現在で54億人、2050年には79億人と推定されています。つまり、この人口増加は、途上国で起きているということになります。



2008年の人口

アジア
40億5200万人

アフリカ
9億6700万人 

ラテンアメリカ
5億7700万人

ヨーロッパ
7億3600万人

アメリ
3億3800万人 




 人口が多い国や地域では、貧困が広がっています。

 しかし、人口過剰が、貧困をもたらすのでしょうか。

 多くの政策策定者たちはYesと答えるでしょう。

 しかし、答えは、「No」です。



 人口の問題は、人口の過剰の問題ではなく、基本的権利の欠如にかかわることであるとWomenユs Global Network for Reproductive Rights(WGNRR)は考えています。多くのひと
たちが資源にアクセスできず、多くの女性たちが自分の生殖についてほとんどコントロールできないのです。



 二つの権利が課題です。

 ひとつめは、将来の人々ではなく、今現在地球に生きている人にとっての権利です。例えば、水、安全な住所、保健医療、教育、雇用、社会保障の利用を通して、人間らしい生活を享受できる権利です。

 ふたつめは、女性たちが、自分の生殖をコントロールできる基本的権利です。生殖についてコントロールできる権利は、女性たちが、経済生活や男性と平等に権力を分け持てるための基礎となります。



 しかし現実は、人口の多い地域で貧困が広がっていれば、ジェンダー、人種や階級による不公正がおきているというのが、社会的構造であり、現状です。



 世界的な経済危機は、ウォール街の崩壊をもたらしました。これは、資本主義的な生産過剰と、収入と購買力の実質価値の低下によってもたらされ、貧困に直結した例にすぎません。決して人口過剰によるものではありません。しかし、人口管理政策をしたがっている人たちは、今回の危機を、「人口が爆発している」只中での資源の不足のせいであると単純化しています。その先は、リプロダクティブ・ライツや人権を無視したり犠牲にして、もっと人口管理を徹底すべきだとの非科学的な政策を正当化しようとするでしょう。







●女性や少女に対するドメスティック・バイオレンスや性暴力は起きています。その理由は、彼女たちがニーズ(自分らしくあるための要求や希望)や権利の主体としてではなく、夫などの男性に所有される財産や商品として扱われているからです。女性に対する差別は、慣習や伝統に基づいており、カイロでの国際人口開発会議(ICPD)の行動計画がきちんと位置づけることができなかった課題です。

●男女比のゆがみは、娘よりも息子が好まれるアジア地域で広がっています。国連人口基金UNFPA)によれば、男女比のゆがみは1950年代から60年代にかけて顕在化し、1970年代に増加したとのことです。70年代には、出生前診断技術が導入されましたが、データ不足のため、はっきりしたことはただちには分かりませんでした。1980年代の中盤になってはじめて、異常さに注意が向けられました。息子は、家族の富や資産を増やす財産であると捉えられているのに対して、娘は金がかかり、他の家族の一員になってしまうものと捉えられています。

●世界の大部分で、若者にとっての性と生殖に関する健康についてのニーズは、不充分にしか理解されておらず、その重要性が軽んじられ、既存の保健医療から無視されていることもあります。若者向けの、性と生殖に関する健康についての情報、教育、サービスは不必要なものであるとか、道徳的に危険なものであるとみられています。若者のセクシュアリティは、多くの文化では社会秩序を脅かすとされ、性行動が上滑りするものと思われています。しかし、若者への情報の制限は、結局は、危険な性行動を増やすだけです。

性感染症の若者は、世界中で急速に増えています。ユネスコの調査ではアジアで感染者が激増しているとのことです。バングラデシュでは、報告された性感染の3分の2は25歳未満で、15歳から19歳では女性の感染は男性よりもはるかに多くなっています。ヴェトナムではHIV/エイズ感染者の半数は若者です。中国ではHIV感染者とエイズ患者の8.7%は、16〜19歳に属します。少年少女たちは性行為の際、コンドームを常に使っているわけではなく、少女のほうがより感染しやすいのです。その理由は、第一に女性性器は感染にさらされる粘膜の面積が広く、生殖器官は防御できるほどには成熟していないからです。第二の理由は、強制的な性交渉に抵抗したり、安全な性行為を交渉できる社会的な力が奪われているからです。さらに、貧し
家庭で育った少女たちは、家族によって売春産業で働かされています。多くの性感染症は治療できるのですが、情報の不足や、恐怖や恥のせいで、治療にたどりつけないことが多いのです。

●性的なタブー、私的領域でのジェンダー(性)に基づく暴力、名誉殺人、少女婚姻は、途上国で広がっています。

●アフリカでは、2500万人がHIVと共に生き、1200万人の子どもたちが、家族がエイズによる死亡のため遺児となっています。毎年200万人がエイズによって死亡し、この感染が女性化しているため女性の感染者が増えており、毎年100万人の妊産婦と新生児が死亡し、アフリカでは16回の出産に1回の割合で妊産婦が死亡し、10代の妊娠の割合が多く、リプロダクティブ・ヘルスにアクセスできるのは3分の1未満で、紛争地域であるコンゴダルフールソマリアジンバブエでは、女性への性暴力が横行し、アフリカ大陸のほとんどの地域では、貧しい有色人種の女性たちは人口管理のため、不妊化を強制されています。

●ラテン・アメリカでは、貧しい環境の下、文化と宗教的原理主義によって、女性と少女たちのリプロダクティブ・セクシュアル・ヘルス/ライツは否定されています。



 WGNRRは、問題は人口過剰にあるのではないと、改めて主張します。本当の問題は、現状の割合で異常に増加するだけでなく、貧困に苦しみ、HIV/エイズに感染し、リプロダクティブ・セクシュアルライツを否定され侵害され、著しく悪い保健状態に耐え、予防しうる妊産婦死亡の危険にさらされる人口そのまま永続させる構造的不公正です。私たちは、必要なのはリプロダクティブ・ジャスティであり、人口管理を拒絶するよう行動を呼びかけます。

 リプロダクティブ・ライツ/ヘルスは、人口管理のための手段とされるべきではありません。もし人口管理のための手段ならば、ライツ/ヘルスは政府や資金提供者によって、望ましい状態を作り出すために拡大され、管理されるでしょう。

 WGNRRのリプロダクティブ・ジャスティ実現に向けての行動の呼びかけは、リプロダクティブ・ライツを社会的公正さの文脈の中で実現しようとする呼びかけです。この呼びかけの根底にあるのは、女性と少女のリプロダクティブ・ライツと女性の経済的地位の向上のための闘いを妨害している有害な文化的・宗教的信念に立ち向かうよう政府や政策決定者に対して要求することです。



(枠のなか)

 1994年、人口状況を調整するため、1万1千人もの政府代表、市民社会、国際機関や活動者たちが、 カイロでの国際人口開発会議(ICPD)に集まりました。この会議での成果
は、人口、開発、人権という幅広い課題が今後20年間の行動計画として工業国と途上国の間で合意されました。ICPDを通して、各政府は、人口政策は、家族計画だけでなく、社会開発、とくに女性の地位向上まで取り組むべきであり、家族計画は幅広いリプロダクティブ・ヘルス・サービスの一部として提供されるべきであると合意しました。このような新たな強調の元にあるのは、個人の健康と権利を高めることが究極的に出生率を下げ、人口増加を抑制するという信念です。ただし、このようなICPDでの合意の根底にあるのは、人口過剰は、少ない資源をめぐって競争が激しくなり、その結果、貧困となるので、人口管理の必要があるというのです。





所得、不平等、貧困についての潮流

【所得の伸び率】

この30年で、所得の伸び率は、ラテンアメリカ・カリブ地域では5.3%から3.2%に、サハラ以南のアフリカでは、4.9%から1.9%に低下しました。これに対して、東アジアでは、4.6%から7.9%へ、南アジアでは4.2%から5.4%へと上昇しています。所得の伸び率はより不安定なものになりました。

【不平等】

世界の所得分配は、この150年間でより不平等になっています。格差は広がり続け、各国間の経済格差はますます加速しています。高所得国は貧困国との格差を維持しつづけ、拡大しています。国内での格差は見えにくくなっていますが、いくつかの国では、特に共産主義からの移行、国や大きな途上国では所得の不平等が1980年代以降悪化しています。指標のなかでの重要な構成要素である平均余命が、サハラ以南やいくつかの旧ソ連圏の国では1980年代以降、短くなっているのです。

【貧困】

途上国で貧困の中で生きる人の数や割合は1960〜70年代にかなり減少しました。しかし1980年代半ばからはその数値の減少はゆっくりになってしまいました。1990年代には1(米)ドル以下で暮らす人の割合は、28から23%に減少しましたが、絶対的貧困人口は、わずか900万人しか減少していません。中国を除外して計算した場合、貧困は途上国で約8000万人増加していることになります。東アジア、南アジア、中東、サハラ以南アフリカの都市部では貧困率が年間1.5%ずつ上昇しています。

【食糧安全】

世界銀行によると、2008年、世界中の途上国で食糧価格が高騰し、サハラ以南アフリカでは8.3%、中東では19.8%も上昇しました。食料を輸入している国ほどその影響は深刻でした。その影響は農村部よりも都市部の住民のほうが深刻に受け止めていました。農村住民は、自身の作物も高く売ることができたので、その打撃を相殺できました。途上国での5歳未満の低体重児の割合は、絶対的貧困の指標でもありますが、1980年から2000年の間に37.4%から26.7%に数としては減少しています。しかし、サハラ以南のアフリカでは低体重児の人数が増えており、近年は南アジアで低栄養の割合が依然として高いのです。





アジアでは

□ 2006年のアジア地域全体の人口は、39億6000万人で、全体の人口密度は、128/㎢で全大陸中最高です。

□ 毎年、東南アジアでは約25万人の女性と子どもたちが、ビルマ雲南省ラオスカンボジアでは、6000から10000ドルで中継国であるタイに人身売買のため連れて行かれます。

□ 2005年のインド全体の人口の性比が女性100に対して、男性107.25でした。中国では106.8、パキスタンでは106、バングラデシュでは104.9であり、この4カ国で世界人口の43%を占めています。このいびつな統計結果は、アジアの文化慣習に由来し、息子選好によるものです。息子は家財をもたらす財産であるのに対して、娘は金がかかり、将来は別の家族のものになるので、負担と見られています。