オーストラリアのリプロダクティブ・ライツ/ヘルス事情

 昨年、ハワード親米・保守政権が倒れてからのオーストラリアでの動きに着目したい。12年ぶりに政権交代した現在のラッド労働党政権の下でも、セクシュアル・リプロダクティブ・ライツ/ヘルスの状況は危機的である。たとえばこの10年でクラミジアの感染は4倍になり、HIVの新規感染も増加している。4人に1人以上の女児と20人に1人男児が性虐待に遭っており、女性の5人に1人は性暴力被害を体験している。オーストラリアには包括的な国家的セクシュアル・リプロダクティブヘルス計画がなかった。若者もさまざまな種類の避妊法を利用しにくい状態である。オーストラリア公衆衛生協会は今年このような状況の改善を求める報告書を政府と下記の堕胎罪撤廃についての議論の際にビクトリア州議員にも送付している。
 しかし、制度は変わろうとしている。かつての保守政権の中でもBrian Harradine上院議員の影響力は大きかった。同議員は緊急避妊や中絶薬であるRU486(ミフェプリストン)を禁止することなどもしてきた(同議員は2005年に引退し、この法律は議会で覆された。)。 合州国の用心棒として、合州国のグローバル・ギャグ・ルールと同様の海外支援原則を維持し続けたオーストラリアは、中絶についての資金援助を拒否するというルールを破棄することを検討中であると、12月10日付けRHReality Checkにて報じられた。東チモールなどでは安全な中絶を利用できないための妊産婦死亡が報告されているが、オーストラリア国際開発局は貧困とジェンダー不平等を終結させるためにはこの資金制限が撤廃されるべきと要求している。
 また、11月25日付けIPSによれば、メルボルンがあるヴィクトリア州は、首都特別地域を除き最もリベラルな州ですが、10月に議会での投票により堕胎罪を撤廃することに成功した。労働党政府による1年に及ぶ作業の集大成として、法改革委員会の中で堕胎罪は撤廃されるべきとの報告書が提出され、それに基づく国会での議決によって中絶が非犯罪化された。その中で、堕胎罪は女性差別撤廃条約16条のリプロダクションにおける平等違反として主張された。また今回の改正では医師の良心的拒否について他の医師を紹介すべきと明記された。この動きに対して、プロライフ派は抵抗することを宣言している。

 オーストラリアでの動きに注目するとともに、日本での運動の参考にしたい。