本年もよろしくお願いいたします。

2008年もついに始まりました。
2007年を振り返り、女性の健康と権利分野での嬉しい10の展開を紹介します。

TOP TEN WINS FOR WOMEN'S HEALTH AND RIGHTS IN 2007・・・IWHCホームページより。
2007年、女性の健康と権利分野での嬉しい10の展開 

1.世界的なHIVイニシアティブが女性の課題を優先
世界エイズ結核マラリア対策基金(以下、世界基金)がジェンダー方針の策定を決定
 世界基金の2007年11月理事会は、女性への投資をする国別エイズ計画を促し支持することにした。国連エイズ合同計画(UNAIDS)も2007年、女性と若者に関心を呼び起こすためにジェンダー平等が全体の優先課題になると発表した。このようなジェンダー指針によって女性と若者は、少なくとも自分自身を守り、自分の命を守る情報、予防、サポートを手に入れることができる。2007年現在HIVに感染している女性は1540万人であり、2001年よりも160万人も増加している。
http://www.theglobalfund.org/en/files/boardmeeting16/GF-BM16-13_ScalingUpGenderSensitiveResponse.pdf
次なる課題は言葉だけでは充分ではなく、どうやって責任を果たすかである。
世界基金は、女性がしかるべき情報やサービスを確実に入手できることに責任を持つジェンダー平等推進上級職の役職を設置した。国連エイズ合同計画の女性とエイズに関するグローバル連合(Global Coalition on Women and AIDS)も、機関全体のジェンダーに関連する事項を統括する新理事を設けている。
 合州国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)には、ジェンダープログラムのための準備金がある。しかし、実際には基金の使途を制限して、女性や若者の脆弱さを増大させてしまっているが、議会はこれを変える力がある。
2007年12月5日、ヒラリー・ロダム・クリントン上院議員(D-NY)は、このHIV感染拡大に対して女性たちがより力を取り戻せるよう、女性と若者のためのHIV感染保護法(PATHWAY)法を導入した。下院でも類似した議案が、バーバラ・リー(DCA)とクリストファー・シェーズ(RCT)から提出された。もしこの法律が実施されれば、PATHWAYによって、PEPFARが、たとえば女性用コンドームを利用しやすくし、女性が利用する医療サービスを強化するような、女性のHIVへの不相応な脆弱さを削減する具体的な計画を作ることを支持するよう義務付けられるだろう。

2.健康と権利が妊娠中絶禁止を阻止する
2007年、メキシコシティの議会は妊娠中絶を合法化し、妊娠中絶を認めるラテンアメリカ最大の都市になった。合法化されてから100日間に、医師は死者を出すことなく約1500件の中絶手術をした。合法化以前の年間3500人が安全でない中絶によって死亡したと見積もられることと比較すると雲泥の差である。ポルトガルで議論になった妊娠10週までの妊娠中絶を合法化する新しい法律も7月に施行された。また、スロバキア憲法裁判所は、妊娠中絶を違法としたキリスト教民主党の要請を支持しないという永く待ち望まれた決定をした。

次なる課題は、より多くの政府が行動しなければならないこと。
アフリカの指導者たちは、安全でない違法な妊娠中絶を抑制するために政府が「政治的な責任」を果たすことを要求している。また、ブラジルのイグナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は安全でない妊娠中絶を公衆衛生の課題として解決すべきと位置づけた。このような指導者たちも他の指導者たちも、中絶合法化とサービスの利用への道を開かなければならない。
 アメリカ合州国では、これまで長い間中絶禁止派の活動者が、中絶を禁止する法律を憲法違反とした1973年のロウ対ウェード判決を覆すよう求めて、州の裁判所に訴訟を提起し続けてきた。州政府と米最高裁判所は、この女性の尊厳を守る歴史的判決を浸食し覆す度重なる試みを押しとどめよ。

3.妊産婦死亡の解決が、世界的な優先課題となる。
 全世界の資金提供者は、毎年50万件以上の妊産婦死亡と妊娠・出産に伴う1000万以上傷害を終焉させるために新規の資金拠出を誓約した。
 イギリスは、望まない妊娠を予防し、より安全な出産が実現できるよう、今後5年間にわたって国連人口基金UNFPA)に対して1億ポンドを拠出すると宣言した。
世界の妊産婦死亡と乳幼児死亡を減らすために、ノルウェーは10年にわたって10億ドルを、オランダは3年以上にわたって1億7500万ドルを拠出することを宣言した。
国連機関、合州国の財団や国際企業も行動を起こすと宣言した。その例として、ジョンD.とキャサリンT.マッカーサー財団は、ナイジェリアとインドでの妊産婦の健康促進のため、反ショック衣服のような新しい救命技術を導入するために1100万ドルを率先して負担すると発表した。カリフォルニア大学、サンフランシスコは、これらの技術がどのように世界中の遠い地域で妊産婦死亡を防ぐために使用できるかという研究を続けるために、ビル・メリンダ・ゲイツ財団から140万ドルの資金供与があったことを発表した。

次なる課題は、より多くの投資が必要であること。
世界健康会議は、1億ドルが投資されるごとに、12,000件の妊産婦死亡を防ぐことができ、400万人の女性に基礎的な医療を提供できると見積っている。女性の生命を救うためにはたとえば避妊、安全な妊娠中絶のようなあまり高額でなく複雑でない介入や妊娠・出産の際に起こりがちな問題への対処、緊急産科ケアなど高額でなく科学的に高度でない解決策がもっと必要である。2007年に世界的に妊産婦の健康増進のため20億ドルの追加投資がなされたことになるだろう。

4.「禁欲のみの性教育プログラム」が再度失格。
 2007年に新たに発表された2つの新しい研究は、「禁欲のみの性教育プログラム」が有効でないと結論づけた。
Mathematica Policy Research社による独立した分析結果は、禁欲のみの性教育を受けた学生とこのようなプログラムを利用しなかった合州国の学生の間には性行動についてなんら差異が見られなかったと結論付けた。PEPFARの検討をする合州国医学研究所(IOM)研究も、結婚までの禁欲プログラムへの予防用資金の割当てを正当化できる証拠を発見できなかった。それでも、合州国政府は自国で禁欲のみの性教育プログラムに資金拠出をして、合州国の対外援助を通して低所得国の若者向けにそのような欠陥プログラムを輸出し続けている。

次なる課題は、効果のない禁欲のみのプログラムへの資金拠出をやめさせ、有効な施策を実施するよう働きかけること。
合州国議会が効果の上がらない禁欲のみプログラムに税金を投入することをやめ、青少年が健康を維持できるよう必要な情報を提供すべきとの世論の圧力が強まっている。2008年には、議会はPEPFARへの広範囲の再授権立法を検討する予定であり、この課題が再び議論の的になるであろう。
多くの発展途上国は、伝統的で保守的な国でさえ、アメリカの先を行っている。カメルーンでは、長年のIWHCパートナーFemmes, Santé, Développement (FESADE)が、2007年4月に性教育カリキュラムを開始した。ここでは、若者が自分たちの身体について尊重し、対等な関係を築き、自分自身や互いをどのように守るかを学ぶことができる。強い支持を受けて、公衆衛生担当大臣Urbain Olanguena Awonoは、このカリキュラムを「青少年や若者たちが健康で、繁栄し、成長していく長続きするシンボルである」と言った。

5.ナイジェリアは、性的な権利を支持する
 ナイジェリア議会が反同性愛者法案を拒否。
 IWHCのパートナーであるInternational Centre for Reproductive Health and Sexual Rights (INCRESE)による連携した教育的で権利擁護的な努力のおかげで、ナイジェリアの議会は人権の懸案事項を引用し、性的指向に基づく広範囲の差別が広がっている事実を認め、反同性愛法案を見事に否決した。
 INCRESEは、この差別法案に反対するキャンペーンを展開するため20ものNGOによって組織された。政策担当者、議員とメディアとの関係でINCRESEが収めた成功は、説得力のある人権についての議論を展開する勢力の、幅広い連立の強さを示している。

流れは変わりつつある。強い反対にも負けず、多くの国では性的権利が支持されてゆくだろう。
2001年に、オランダが同性婚を許可する最初の国になった。その後、ベルギー、カナダ、南アフリカ、スペインと合州国マサチューセッツ州という5つの国では同性婚を合法化した。更に16カ国と9つの合州国の州は、同性のカップルに結婚における権利と責任の全部または一部を与えるという市民的結合(civil union)を認めている。
2007年12月13日には欧州連合加盟国のリーダーは、基本的権利の章を含む修正条約に署名した。その章は、性的指向に基づく差別を明確に禁止することを含む最初の国際条約である。

6.緊急避妊法へのアクセスを保障する
アメリカ合州国。州議会が、緊急避妊を提供するための法案を通過させる
 コネティカットオレゴンコロラドなどの州政府は、カトリック系病院を含む病院に、性暴力の被害者に対して緊急避妊法(EC)の情報を渡し、彼女たちが求めれば利用できるようにするよう命じた。ニューヨーク州はこれより1歩先に進んでおり、医療扶助制度によって18歳以上の女性が1年につき6回まで緊急避妊を利用できることを保障している。
 アメリカ合州国では、すべての妊娠のうち半分は望まない妊娠であり、これらの半分は避妊についていかなる方法も利用していない11%という少数の女性の中で起きている。緊急避妊は、望まない出生と妊娠中絶を防ぐことができる第2の機会となる。

次なる展開。世界中の国々は、緊急避妊を利用できるよう保障するために砦を守っている。
チリでは、政府はECを販売拒否する薬局に対して罰金を課すことにして(訳者注、ただしチリは妊娠中絶が禁止されているという特殊事情もある)、現在までに、緊急避妊を提供しなかったことで約100の薬局に合計300,000ドルの罰金を命じた。
 イタリアの政治家と薬剤師は、薬剤師が緊急避妊薬の配布を拒むよう求めるベネディクト16世法王の2007年10月の訴えに対して、怒りをもって反応している。イタリアの保健省大臣リビア・タルコ氏は、法王には若者が性的に責任を取れるよう促す権利があるものの、薬剤師が緊急避妊に対して「良心的拒否」をするような警告をとり合わなくてもよいと発言した。

7.ニューハンプシャー州は、未成年者の権利を尊重する
ニューハンプシャー州は、妊娠中絶をする際の親への通知法を廃止する最初の州になった。
2007年6月、ニューハンプシャー州は18歳未満の女性へ妊娠中絶を提供する場合にその48時間前に少なくとも両親に通知することを医療者に要求していた法律を廃止した。アラスカ州でも州最高裁判所が類似した法律を憲法に違反すると宣言し、州政府は2007年11月にこの判断に従った。裁判所は法律が妊娠中絶を利用するという未成年者の判断を覆す両親の「拒否権」を認めることは、州の憲法がはっきりと保障したプライバシーの権利を侵害すると判示した。
30以上の州では法律で未成年者の妊娠中絶には何らかの親の同意を得なければならないことになっている。そのような後退した法律を維持している議員たちは、未成年者は妊娠中絶の利用を決めるほどには成長していないが、子どもを育てるには充分成熟しているという矛盾した考えを持っていることになる。結局未成年の妊娠中絶に条件をつける法律は、妊娠中絶についての未成年の決断を引き延ばすことによって、より早い時期での妊娠中絶がより安全であるにもかかわらずこのような機会を奪い、彼女たちの健康を危険にさらしているに過ぎないのである。

次なる展開。若者の権利を認めることが世界的に広がりつつある。
子どもの権利条約は、若者たちが自身の発達能力に応じて自身のことを決定できる権利があると認めている。しかし、これらの権利は実際には広く侵害されている。
 未成年の女性は、FGM(女性器切除)をするかどうかについて発言権が認められていない文化もある。
 同様に、未成年の女性が、いつ、誰と結婚するかについて発言権が認められていない地域も多い。幼児結婚は、アフリカ、南アジアでは広くなされ、中東とラテンアメリカの一部の国でも広くなされている。
 残念ながら、2007年12月の国連の子どもの健康と人権に関するハイレベル会合では、これらの基本的な課題は話題にされなかった。政府は、子どもや若者たちの権利を保護・促進する分野でもっと前進しなければならない。

8.インド政府が性教育を推進する。
インド政府は、全国の公立学校で性教育の授業を必須教科とした。
 インドでは約250万人がHIVに感染しているが(この人数の信用性には疑問も残るが)、このような深刻な事態を受けて、インド政府は、14〜18歳の学生向けに毎週2コマの性教育の授業をするよう推薦した。各州政府は政府機関と国連によって作成されたカリキュラムを修正してもよいことになっている。そのカリキュラムは、男女平等を身に付けるための授業を当然含んでいるが、インド国立エイズ管理機関の理事Sujatha Rao氏は「我々は、後期中等教育の学生が理解しうる明瞭なメッセージが欲しい。HIV/エイズのまわりでのシャドー・ボクシングであるべきではない」と支持した。

各州政府がこのイニシアティブを骨抜きにするのか、徹底的にやり遂げるのか。
インドの29州のうちの12週は、学校で性教育を禁止してきた。文化に伴う争いの中で、このようなカリキュラムは露骨過ぎるという口実で禁止されてきた。Maharastra州では、インド教員組合は性教育プログラムの禁止は後退に向かっていることだと非難して、禁止にもかかわらず性教育カリキュラムを教え続けてきた。
 若者も声を上げ始めている。2007年にインドで開催された第4回アジア太平洋Reproductive and Sexual Health and Rights会議では実践ワークショップでのAdvocacyを通してIWHCとともに活動している若い女性が、ほかの若者たちと一緒になって、性教育の禁止は憲法が保障している情報への権利、教育への権利、健康への権利を侵害するものであり、かつ国連の条約や宣言の下でのインド政府が果たすべき責任に違反しているので、性教育の禁止に反対すると記者発表をした。

9.より多くの合州国の州が、避妊具の処方について保険適応を命じるようになる
 2007年、オレゴン州は、避妊具が健康保険適用の対象になっている他の26州の仲間入りを果たした。
 合州国の女性のうち約98パーセントは生殖可能期間中に何らかの避妊方法を利用しているが、多くの保険会社はたとえバイアグラのような薬に健康保険適用しても、避妊薬(具)への保険適用を拒否している。かつてはオレゴン州の約半数の保険会社は、避妊薬(具)の処方箋に保険適用しなかった。今回の法案の支持者は、2008年1月1日から施行されるこの法案によって150万人の女性に影響を及ぼすと発言している。
関連した勝利として、5年の訴訟の末、合州国最大の民間小売業者ウォルマート社は、従業員の避妊薬(具)利用への健康保険提供を始めた。

次の課題は。2008年の大統領選挙の結果は、連邦レベルでの避妊薬(具)への保険適用を含む、女性の健康の優先性に影響を及ぼすだろう。
 1997年以降、超党派的な支持にもかかわらず、連邦議会は処方箋保険と避妊への保険適応法を通過させることができなかった。多くの大統領候補は、中にはまだ立場を明確にしていない候補者もいるが、避妊薬(具)の処方への保険適用を支持している。次期大統領は、この連邦議会で10年間も足止めを食わされてきた保健政策を推進しなければならない。

10.科学者たちは、女性主導のHIV予防を推進する。
合州国の科学者は新しい女性用コンドームを設計し、マイクロビサイドの開発のための資金提供を受ける。
 性感染症STI)予防のため女性が主導できる唯一の手段である女性用コンドームによって、女性たちはより安全なセックスのための交渉と望まない妊娠とSTIを予防ができるようになる。シアトルに拠点を置く非営利研究グループのPATHは、最近より安価で改善された女性用コンドームのモデルを設計した。支持者は、その新しい女性用コンドームは現時点では使用の認可がなされていないものの、今後ますます流通し入手しやすくなり、女性たちが望まない妊娠とSTIに対してより主導できるようになると発言している。
 先月、東部ヴァージニア医科大学のCONRAD Programは、HIV予防のマイクロビサイドの開発を継続する目的でビル・メリンダ・ゲイツ財団から2850万ドルを受け取った。この資金によって、新しいマイクロビサイド、避妊用発泡剤のような物質またはHIV感染予防用の膣に挿入されるゼリーの効用の検査が支援される。

さて、世界が、女性が自分で主導権を持てるHIV感染予防法を確保できることに専心できるか?
より多くの資金提供と政治的な責任の引受けがあれば、入手しやすく女性が主導できるHIV感染予防手段への追求は加速するだろう。
女性用コンドームの700倍の男性用コンドームが現在流通している。女性用コンドームを現在の年間2000万人から2億人へと、より流通して世界的に入手できるようになれば、HIV感染予防にかかっている費用を3分の2削減できる。研究によれば、効果的なマイクロビサイドが開発されれば、世界中で3年間で200万人以上のHIV感染を防げると見積られている。2007年の研究の後退(訳者注2007年にはマイクロビサイドの1種UshercellによってHIV感染リスクが高まる恐れがあるとしてその治験が中止された)にもかかわらず、その研究は続かなければならない。