3月30日、G20の問題を話し合い学習会で発表をしました。

前半は、世界社会フォーラムでの「気候についての公正」集会での宣言文です。後半は私のスピーチの原稿です。気候変動の記事は初めてですが、とにかく、誰が負担を負わされているのかということを原点に考えることが必要です。

 何百年もの間、生産至上主義と産業資本主義は、私たちの文化を破壊し、
私たちの労働を搾取し、私たちの環境を汚染してきました。
 いまや、気候変動は厳しい現実になってしまい、
地球は「もうたくさんだ!」と悲鳴をあげています。
Climate justice Assembly Declaration
CLIMATE JUSTICE NOW!  
No to neoliberal illusions, yes to people’s solutions!
「気候についての公正」集会宣言 ベレン ブラジル、2009年2月1日

 
いま、気候と環境についての公正の実現を!
サヨナラ 新自由主義の幻想!  ようこそ 人々たちによる解決!

 何百年もの間、生産至上主義と産業資本主義は、私たちの文化を破壊し、私たちの労働を搾取し、私たちの環境を汚染してきました。いまや、気候は大きく変動してしまい、地球は「もうたくさんだ!“ya basta”」と悲鳴をあげています。
 気候変動・金融危機という一連の問題を引き起こした人たちは、こりもせずに、自分たち側には解決策があると強弁し続けています。例えば、排出量取引、環境への負荷を軽減する石炭の効率的利用技術(クリーン・コール技術)、原子力(核)推進、バイオ燃料、さらには「グリーン・ニュー・ディール」という産業化まで提案しました。しかし、その解決策はまやかしにすぎず、新自由主義の幻想なのです。そのような幻想を踏み超えて、今こそ動きだすときです。
 気候の危機に対する本当の解決策は、地球を日々保護してきた人たちや、自分たちの環境や生活状況を守るために毎日闘っている人たちによって展望されています。私たちは、地に足の付いた解決を世界に広げる必要があります。
 私たちにとって、気候についての公正さと社会的公正を実現するための闘いは全く同じものです。それは自分たちの生活空間、土地、森や水を守るための闘い、農地所有や都市の改革、食料やエネルギーの主権の実現のための闘い、女性や労働者の権利の実現のための闘いです。先住民の人たちや「南」の人たちに平等と公正さをもたらすための闘い、富の再配分を実現する闘いであり、「南」の債務は「北」が歴史的に環境破壊をもたらす悪行を重ねたために負担させられた債務である、という認識を勝ち取るための闘いです。
 世界のエリートによる実体経済に基づかない、実際の人間の営みを無視した市場優先の関心や、無限の成長と消費という仮定に基づく支配的な開発モデルの欺瞞を暴き、これに代わる気候についての公正さを求める運動は、私企業などに独占されてはならない公共財を取り戻し社会的・経済的実体・現実を気候変動についての私たちの闘いの中心に据えます。
 私たちは、世界中の、労働者、農民、漁民、学生、若者、女性、先住民などすべての人々に、私たちの地球、社会、文化のために、ともに闘い、気候の危機について本物の解決を作るよう呼びかけます。一緒になって、気候についての公正を実現する運動ができあがろうとしています。私たちは、G20サミット対抗行動、3月28日から4月4日の世界的気候の危機週間、ビア・カンペシーナによる4月19日の集会に合流することを支持します。私たちは、2009年10月12日の、母なる地球と先住民の権利を守る国際行動日呼びかけを支持します。私たちは至る所で、今年12月のコペンハーゲンでの国連気候変動会合までの間も、最中も、その後も、特に2009年12月12日の国際行動日に集まって、多様な行動を呼びかけます。
 私たちの活動の全てにおいて、間違った解決を暴き、「南」から人々の声を上                                               げ、人権を擁護し、気候の公正さを実現するための闘争で団結を強めます。私たちが正しい選択をすれば、それは同時にすべての人にとって、より良い世界を創ることができます。

気候変動に公正の視点を! 気候変動対策に人権の視点を!
すぺーすアライズ 鈴木ふみ allies@crux.ocn.ne.jp
 
 気候変動の顔について、メディアでは北極グマなど動物で象徴されることが多かったのですが、気候変動は人間の顔をしています。気候変動の影響は、すべての人々に波及しますが、途上国の人々や貧しい人々、農業や森や海など自然とともに生活している人々、社会の中で権利を制限されている女性たちに、より大きな悪影響を及ぼします。「適応のアパルトヘイト」という言葉がありますが、気候変動に対して取りうる手段にも格差が広がっています。その負担は、気候変動の悪影響を受けた人々や地域の中でも、女性たちの水汲みがより遠くなるなど、女性や貧しい人に重くのしかかります。気候変動への適応といっても、貧困国では増水の災害から身を守るために泳ぎを覚えることくらいしか対策ができません。女性差別が大きい社会では、女性の移動の自由が制限されているため異常気象による嵐や洪水の災害時に死亡する割合が男性よりも高くなります。災害復興時においても女性の財産権・相続権が制限されている国では、生存を脅かされています。先住民差別がある国では、食糧危機が起きると先住民の人たちの栄養状態が急激に悪化します。巨大台風ハリケーンカトリーナでは、災害復興時に人種差別が歴然と現れたことは皆さんの記憶に残っていると思います。二酸化炭素をそのような人たちが多くの排出しているわけでもなく、歴史的にも大量の排出をしたわけではありません。2005年イヌイットの人たちなどにより、「気候変動人権誓願」が開始されましたが、気候変動によって生存を奪われ、脅かされる人がおり、人権問題として考えるべきであり、そのとき必要なのは「公正の実現」です。 
健康と気候変動については、まず、途上国の女性や貧しい人たちの健康に悪影響を及ぼします。沿岸部、農村や都市のスラム地区での衛生状態の悪化やマラリアの発生という発病のリスクが高まるだけでなく、保健サービスが民営化される流れの中で、また金融危機を口実に途上国の保健への支援を削減しようと試みている中、気候変動は人々の生存にかかわる課題です。
 日本政府の姑息さは、このような気候変動に対して、温室効果ガス削減についての中期目標を出し渋り、セクター別積み上げアプローチという荒唐無稽な方式を提案し、火力と原子力に依存する高排出の大企業の排出への強制的規制を先送りしています。つい先日には、日本は、ウクライナチェコから、排出権取引を購入しましたが、金があれば排出できるというだけで、排出を削減しようということを最初から放棄した態度で1億トンの排出枠取得にメドをつけています。しかも、日本に課された必要な削減6%のうち、抜け穴的な森林による吸収が3.8%、そして海外からの排出枠購入1.6%と温室ガスの削減には正面から取り組んでおらず、数字合わせに終始しています。
 先進国の気候変動対策についてですが、気候変動に対する先進国側の誤った、不公正な解決策によって、さらに途上国の人々は被害を受けています。高所得国の経済と社会の仕組みと価値観を変えなければ、本質的な解決はありえません。生活を自動車に依存し、自動車の所有に誇りを持ち、自動車製造を国策にする社会を変えることが必要です。高所得国はこれまで多くのガス排出により経済開発をしてきたのであり、その責任の認識が出発点になり、まず自国の排出を削減する必要があり、「南」の国は技術移転を要求する権利があります。G20は高所得の生産と消費をそのままにして、途上国に制約と負担を強いるものに過ぎません。途上国にメリットがなく、高所得国にだけメリットが大きいしくみです。近年の傾向として、気候変動の悪影響を受ける人々は相変わらず、解決から排除されているのに対して、企業が国連の気候変動会議に大きな影響力を持つようになっています。企業は多くの人々が苦しんでいる現実を背を向け、いかに市場化して大きな利益を上げようかと、気候変動を新しいビジネスの機会にすべく狙っています。
「グリーン・ニュー・ディール」についてもこのような企業に利用されないよう監視していく必要があります。バイオ燃料、巨大ダム開発、経済と食糧危機を口実にタブーでなくなりつつある遺伝子組換え、世界銀行が推奨する先住民や農民を排除して生活を奪う森林プランテーション、市場による炭素排出量取引など、挙げればきりがありません。
 排出量の市場取引は、排出削減の努力をせずに生産を続け、貧しく、交渉力の弱い国に排出権を買い叩くシステムですが、これでは排出削減は実現できません。排出量を商品化する排出権取引は、地球を民営化し、売り物にしているのです。これまで、すべての人が享受できるはずの水、教育、保健が民営化され、売り物にされてきたように、です。
 CDM(クリーン開発メカニズム)についても、高所得国に発展途上国で更なる金儲けを続ける権利を与え、国内の排出権削減の義務から逃げる策であり、途上国における持続可能な開発にとってプラスとなっていません。排出量削減への貢献の測定が偏っているばかりか、その一環として実行される巨大インフラや森林プランテーションは環境を破壊することになり、農民や先住民たちの生活を破壊します。気候変動に乗じて、これまで自然・天然資源として、その土地の人々に利用されてきたものが、大企業によって私有化されています。
 G20という限られた国によるニセ者の解決ではなく、公正さと人権を基準にして、気候変動の被害を大きく被る人たちの参加とジェンダー平等を保障する国連を通じたプロセスで、気候変動の対処に向けて世界が一致して取り組む必要があります。