プレスリリース リーダーの自覚なし。無責任ラクイラG8サミット文書

プレスリリース リーダーとして自覚なし。無責任G8サミット文書 市民社会は大きく落胆
2009年7月9日

 本日、下記のプレスリリースを発表しました。
                  〒272-0023 千葉県市川市南八幡4-5-20 エムワイビル5A
                         Tel.047-376-6556 Fax.047-320-3553
                        NGO すぺーすアライズ 事務局長 鈴 木 文
                                  allies@crux.ocn.ne.jp

2009年7月8日から10日まで、イタリア・ラクイラにてG8サミットが開催されていますが、8日(ローマ時間)、G8から首脳共同声明など今後の世界の方向性に影響を及ぼす重要文書が発表されました。
今回のG8サミットは、昨年の世界同時金融危機の影響下で開催され、かつ、開発分野に消極的なイタリアでの開催とあって、開催前から、世界同時金融危機の影響を深刻に受けた途上国の人々や貧しい人たち、特にその影響を深刻に受けている女性や子どもたちに向けた公正な援助が妨げられて、生命の危機にさらされ、さらなる貧困に陥り、仕事を失い、気候変動の影響により苦しむことが懸念されていましたが、今回のG8サミット共同宣言等は、その懸念を現実にする、無責任なものでした。
奇しくもG8首脳共同宣言は、「RESPONSIBLE LEADERSHIP FOR A SUSTAINABLE FUTURE (持続可能な未来に向けた責任あるリーダーシップ)」というタイトルがつけられていますが、政治的な美辞麗句を並べ立て、G8の公正な世界の実現に向けた資金拠出をできるだけ明示せず、また、資金拠出について言及した箇所も責任の範囲の縮小について解釈の余地を残す過去のG8による公約をうやむやにするものでした。このような無責任な共同声明では、持続可能な未来を実現できるはずがなく、同時にこのような共同宣言しか作成できないG8サミットがもはや世界の経済や開発政策策定を担う能力を持ちえないことが露呈しました。
金融危機への対策としてG8諸国が金融機関救済のために投入した金額の70分の1にしか世界の援助総額は及びませんが、今回のG8サミットではこれまでの援助(ODA)の金額についての公約さえ果たせないことを露呈しました。この援助資金を拠出しないということは、世界の中で弱い立場に置かれている多くの人を見殺しにすることを意味します。女性や子どもたちの命と健康を守るために必要な取り組みについては詳細に列挙されたものの、その実現のために必要な資金の拠出については、多くの母子保健に関わる専門者集団からの要望にも関わらず、まったく約束されませんでした。また、2010年までにHIV/エイズについて治療・予防・ケアへの普遍的アクセスを実現するための資金の拠出についても言及がなく、保健システムへの拠出についても資金拠出が不明な文言でした。
また、今年12月では京都議定書後の世界的枠組みの合意を目指すコペンハーゲンでの国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に向けて、G8サミットでは気候変動に対して積極的取組みが提案されることが期待されていましたが、気候変動への取組みの必要性と長期的目標が確認されたに過ぎず、中期的目標に向けての資金的拠出を含む具体的な取組みについては合意されず、また途上国が直面している喫緊の気候変動への適応への支援についても資金拠出の約束はされませんでした。
しかし、世界の経済や開発について政策を協議する場はG8だけではありません。国連をはじめ今後もさまざまな場が用意されています。公正な社会の実現に向けた、国際社会で果たす日本の役割の今後に期待したいところです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/italy09/index.html
G8首脳共同声明
RESPONSIBLE LEADERSHIP FOR A SUSTAINABLE FUTURE 「持続的未来のための責任あるリーダーシップ」
http://www.g8italia2009.it/static/G8_Allegato/G8_Declaration_08_07_09_final,0.pdf
G8による公約済み事項についての説明責任を満たすための報告書http://www.g8italia2009.it/static/G8_Allegato/G8_Preliminary_Accountability_Report_8.7.09,0.pdf

 当団体「NGOすぺーすアライズ(Space Allies)」は、女性の人権と、開発・保健の課題に取り組むNGOであり、国連ミレニアム開発目標の中でもっとも達成が危ぶまれている、妊産婦の健康改善に特に集中して取り組んでいます。