性交同意年齢 覚え書

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 結論 現行刑法の性交同意年齢の13歳は低すぎます。

 少なくも、中学卒業年齢までの引き上げが望ましいです。

併せて ① それ以上の年齢に対する性交等とは区別した条文にて規定し(法定不同意性交等)、 ②かつ、それ以上の年齢に対する不同意性交等よりも重く処罰すべきです。また、③ 性交同意年齢未満の未成年の年齢についての錯誤については、 被告人等の故意について事実認定をより客観的にするだけでなく、合理性がない誤信を許容しない法制とすべきです。

 

 すでに国連自由権規約委員会の第6回日本定期報告審査にかかる総括所見(2014)では「これ以上遅滞させることなく性的行為同意年齢を引き上げること」と勧告されています。  

また、国により相違はありますが、多くの先進国では、おおむね16~18歳に規定されていることが多いものです。下記はウィキペディアからの引用です。

全世界における性的同意年齢
■ 第二次性徴を以って、 ■ 10歳以下、 ■ 12歳、 ■ 13歳、 ■ 14歳、 ■ 15歳、 ■ 16歳、 ■ 17歳、 ■ 18歳、 ■ 19歳、 ■ 20歳、 ■ 21歳以上、 ■ 州・地域による、 ■ 婚姻を以って、 ■ 規定なし、 ■ データなし

 

1 中学生の性暴力被害の実態

中学生の性暴力被害は実数として多いにも関わらず潜在化しています。また、中学生の被害者の中に、社会や大人に対する不信感に起因する態度や外観も相まって、 性非行等として扱われている事例も多くあります。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター支援状況等調査の概要(内閣府男女共同参画局推進課 暴力対策推進室)によると、下記図表の通り、全国のセンターにおいて対応した全ての相談を分析すると、被害者の年齢は、10代以下が約4割であり、面談では、「20歳台」が31.3%、次いで「中学卒業以上19歳以下」の22.3%、「30歳台」の15.2%となっています。19歳以下の被害者が40.6%と、約4割を10代以下の被害者が占めており、若年層の比率が高いことが確認されました。さらに、中学生以下に限っても、約2割に上っています

図表 被害者の年齢

 

2 同意の定義

 性交等に対する同意について、現在の刑事裁判では、不同意について適切に認定している事例もある反面、不同意を明示して表現しなかった(できなかった)事例では、消極的同意として同意が認定されたり、不同意についての加害者の錯誤が認定されてしまう事案も多々見受けられます。

 カナダ刑法では、同意を、「性的行為を自発的に同意すること」と定義しており、また、国連女性の地位向上部による女性に対する暴力立法ハンドブックも、不同意について「明確に表現された同意がなかったこと」と定義するよう推奨しています。

 さらに、少年の性非行に関する米国特別委員会の報告による定義( 1993年)では、①年齢 、成熟度、発達度、役割、経験に基づいて、何がなされるか理解している、②提案されたことに関する社会的規範を知っている、③性行為をした場合に起こりうる結果と、性行為をおこなわないという別の選択肢もあるというそれぞれを承知している、④性行為に賛成する意思と反対する意思の両方の選択肢が平等に尊重されるという前提がある、⑤意思決定が 自発的になされる、⑥知的な理解能力を有することが条件とされており、多くの13歳から15歳の子どもたちがこれらのすべての点をふまえた同意ができるとは考え難いです。

 

3 初体験年齢との関係

 初体験年齢と性交同意年齢には論理的な直接的な結びつきはありませんが、社会の実態や成熟の程度から、少なくとも性交同意年齢が、平均的な初体験年齢よりも著しく低いことは正常ではなく、若年者たちが保護されず、搾取の餌食になっていることを裏付けるものと考えられます。

この点、日本では中学生の性行為の体験率は少しずつ増加傾向にはありますが、いまだに5%未満であり(「若者の性」白書等)、この点からも刑法の性交同意年齢が13歳というのは低すぎます。

 なお、下記図表は、ヨーロッパでの初体験年齢です。おおむね初体験年齢と刑法上の性交同意年齢が合致しています。(地図とデータでみる性の世界ハンドブック12頁より引用)。

 また、ラテンアメリカでの状況と課題については資料として添付しました。

 

4 性教育

避妊、人工妊娠中絶等については、中学校ではなく高等学校で指導する内容として、中学校での学習指導要領の範囲を超えるものとされ、一部の地方自治体によって、学習指導要領の範囲を超えた指導を行うことを条件付きで容認されているにすぎません。

 もちろん、避妊、人工妊娠中絶だけでなく、その基礎となる、対等な交渉力を身に着けられるよう、ジェンダー平等、人権に基づいた、科学的根拠に基づいた包括的性教育が不可欠ですが、残念ながら、中学校でのその実現はいまだに不十分です。

※ ユネスコ等による改訂版「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は下記からご覧いただけます。https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000374167?fbclid=IwAR3M2Rdlc0G1EjLfYDUgo5UyexVF9oMavcZDDtpYoGsauNXmYm12yG8w-B8

他方で、インターネットやSNS等による情報の氾濫やコミュニケーション範囲の拡大によって、中学生等の若者の意思決定はますます困難となっており、年長者からの搾取の標的にされる機会は増えました。

 このような環境のもとでは、中学生が責任をもって自分の身体について判断することは困難となっています。

 

5 妊娠

15歳未満の妊娠は、特に貧血、低血鉄、妊娠関連の高血圧に対して脆弱です。その他にも、10代の妊娠について、妊娠した女性、乳児、社会経済面のさまざまなリスクが指摘されています。

3 Risks of Teenage Pregnancy - Revere Health | Live Better

https://reverehealth.com/live-better/risks-teen-pregnancy/

また、世界保健機関(WHO)も思春期の妊娠の健康面、社会経済面の悪影響を分析しており、その背景の一つに、性暴力による、避妊への不充分なアクセスや医療従事者の偏見等の結果としての望まない妊娠を上げています。

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/adolescent-pregnancy

 この観点からも、特に中学生以下の若者の保護が必要です。

6 人工妊娠中絶

人工妊娠中絶件数については、近年は全体で減少傾向にありますが、平成30年度のデータによれば、15歳未満190件、15歳475件となっており、その多くが望まない妊娠の結果であると推認されます。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/dl/kekka6.pdf

この件数の中には、性的判断能力や交渉力が発達途上の中学生に対する搾取事例が多数含まれていると考えられます。

なお、10 代での人工妊娠中絶は心身の健康に様々な影響をもたらすことも少なくない、とも指摘されていますが、日本では、人工妊娠中絶方法について、世界保健機関(WHO)が推奨する安全で精神的負担が少ない方法が採用されていないため、身体的・精神的負担が大きく、医療者、教育者、親族、社会の審判的態度(説教的な上から目線)、偏見による影響もかなり大きいと考えられます。

 

7 性交同意年齢の引き上げとともに実施されるべき刑法改正 

性交同意年齢未満の未成年との性交等については、年少者の保護、及び、年少者に対する搾取や虐待の防止の観点から、① それ以上の年齢に対する性交等とは区別した条文にて規定し(法定不同意性交等)、②かつ、それ以上の年齢に対する不同意性交等よりも重く処罰すべきです。また、③ 性交同意年齢未満の未成年の年齢についての錯誤については、 被告人等の故意について事実認定をより客観的にするだけでなく、合理性がない誤信を許容しない法制とすべきです。

 

関連する記事として下記を紹介します。

日本と並んで、世界の中で、性交同意年齢が最低クラスであった韓国、フィリピンでは、2020年にいずれの国でも16歳に引き上げることになりました。

① フィリピンでの性交同意年齢を16歳に引き上げる記事(2020年12月)

'Victory for children': Philippines set to raise age of consent

https://www.japantimes.co.jp/news/2020/12/21/asia-pacific/philippines-age-of-consent/

 

② 韓国で性交同意年齢を16歳にひきあげた記事(2020年5月)

https://www.bangkokpost.com/world/1917392/south-korea-raises-age-of-consent-from-13-to-16

 

③ ラテンアメリカの性交同意年齢についてのユニセフ資料(2016) 国際人権水準として、13歳未満では低すぎることを述べています。

https://www.unicef.org/lac/media/2806