California Bar Exam 覚書

いつもとテーマを変えて、California Bar Examのために役立ったことを忘れないうちに書き留めておきたいと思います。この覚え書は順次、書き足していきます。

すでに、California Bar Examの勉強法、合格の秘訣については多くの法律家の方々がまとめていらっしゃるので、そちらをごらんください。

1 MBE対策

 「ある程度」の数の過去問題を解くことをお勧めします。私の場合は、adaptibar AdaptiBar Online MBE Simulator & Prep | AdaptiBarで約2000問解き、本試験では8割以上の正解、換算後だと1500点超を取ることができました。
 人により、あうあわないがあると思いますが、私の場合は、間違えた問題だけ、まとめて保存して、直前期に解き直すことを対策としました。時間があれば、もっと多くの問題を解き、全問しっかり復習したいのですが、私のように勉強時間が確保しにくい人には、この方法は役立つかもしれません。

  AdaptiBarは、教材がオンラインのため、COVID-19の影響下で、試験がオンライン化されたことにも対応でき、結果としていい練習になりました。

 私の場合、時間が文字どおり「不足」することはありませんでしたが、残り時間をにらみながら、時間ギリギリでした。100問180分という時間の枠組みがあるので、私は30分で17問のペースにできるだけ近づけるようにして、30分ごとに完了した問題数を図り、そこから遅れたら正確さよりも速さ重視に切り替えて解くという方針で臨みました。

 

2 筆記試験対策

 これも時間との勝負という面が大きいように感じました。

 California Bar Examは、UBEと比べると、やや一ひねりがあったり考えさせるところがあると思いますが、優秀答案を見るとその問題意識に到達していなかったり、踏み込みが浅かったり、やや不正確な記述があったり、適用場面の異なるルールが書かれていたりしていて、必ずしも手が届かないレベルではないと感じました。

 しかし、海外留学経験がなく、日本語での仕事が大半を占める私にとって、一番、大変だったのは、タイピングの速度でした。仕事では「かな」入力をしている私にとっては、受験勉強を始めた時点では、恥ずかしい話ですが、1分あたり10words台の入力速度しかありませんでした。合格ラインにひっかかるには、1時間に割り当てられた1問の解答が1000words程度になる速度を目指し、タイピングソフトで入力の練習をしました。

何とか1分あたり40words台でのタイピングができるになり、本試験でも1000wordsにやや足りない単語数の答案を書くことができました。

もちろん、1000words程度では、出題者が期待している解答には届かず、最低限を拾い上げるレベルにしかならないことはわかっていますが、粗点で60点、65点は確保できると思います。

 英文タイピングが得意な方には全く不要なアドバイスですが、日本で、日本語で仕事をしていて、英文タイピングの機会が少ない方には、鍵となるかもしれません。

3 時差対策

 私は、複数回受験者(リピーター)で、以前はカリフォルニアで受験したことがあり、2020年10月の試験は日本からオンラインで受験しました。日本で生活をしており、夜勤や寝不足には極めて弱いため、時差対策には苦労しました。日本とカリフォルニア州とでは時差が17時間(夏時間の場合16時間)あります。試験は、日本時間では、夜中から朝の時間帯に実施されます。

 カリフォルニアで受験した際には、前週の後半からカリフォルニア入りをしましたが、夜に寝付けず、日中は眠い日が続き、試験当日も日中眠く手困りました。

 日本でのオンライン受験は職場の協力をいただき、前週の後半から、勤務時間を深夜から午前中として、明け方までを書類仕事、午前中を面談や電話連絡業務の時間としました。いつもの昼食時間を夕食とみなして、午後早めに退社して、寝付く「訓練」をしました。しかし、なかなか寝付けず、寝付いても短時間で覚醒してしまうことが続き、少し慣れかかったところで試験に突入しました。オンライン試験では、ほかの人がいないことをいいことに、試験と試験の合間の時間にタイマーをかけて、仮眠をとりました。これが眠気対策、疲労回復策として、意外と勝因だったかもしれません。

 特別、有益な教訓はありませんが、市販の睡眠薬は効かず、入浴すること、窓をしっかりふさぎ、音と光をできるだけ入れないようにすること(手作りですが、窓枠に、使用していない毛布を詰めて段ボール紙でふさぎました)が、役に立ったと思います。

4 模試

 日本で働きながら受験する方にとっては勉強時間の確保が課題となっている人は多いと思います。私も、合格するためには、この本を読んでおきたい、時間を図って本番さながらでの時間間隔を体得したいという「夢」はありました。

 しかし現実は、仕事と家庭生活のため、移動時間中にMBEの過去問を解いたり、土日に仕事を入れない時間を確保したりというのが、仕事時間の確保の限界でした。MBEのシミュレーションのためにまとまった3時間を確保できず、MBEの過去問は、1問解いては解説を読み、という方法で勉強しました。そのため、実際の3時間の試験時間で、全問解き終わるのか、体力や集中力は持つのか、は、頭の中でプランを描いただけで、ぶっつけ本番でした。

 さらにessayやperformance test については、王道としては、所定の割合時間(essayは1時間、performance testは1時間30分)の制限時間内で解く練習をし、また、採点や添削を受けること、と言われており、一緒に受験した仲間からもそのように勧められていましたが、「全く」実行できませんでした。できるに越したことはありませんが、邪魔されることなく、試験に集中できる1時間を確保することも難しかったです。
 もっとも、私は複数回受験者であるため、不合格だった試験が、私にとっては、模試に代わる重要な経験値になっています(かなり高い模試受験料ということになりますが)。

5 essayやperformance testの勉強

 では、私がessayやperformance testの対策として何をしていたのか、何をしていたのか、と言えば、出来合いのoutlineを読むこと、過去問の解答を読むことでした。
(試験委員会公表のものPast Exams (ca.gov))と下記の市販と受験校のものを併用しました。

www.amazon.co.jp

 

 受験校にはついては、どこがよいとか、比較している余裕はなかったので、最初に情報を得たBarbriさんの教材を使用しました。問題と解答例を読み、解答例で必ず落としてはならない点、私だったらこう書くという点、合格前の勉強の際には解答例のダメな点を意識してこの作業をして、essayについては、合格する際には公表されている約20年分を「読破」して臨みました。

 わからないところは、書籍にあたり、インターネットで調べたりはしましたが、受験のために通読したものは多くありません。

6 Performance test対策

 日本の法律家の皆さんにとっては、Performance testの内容自体は決して難しいものではありません。日本語で解答してよいなら、または、解答時間が無限にあるならば、合格点と言われている70点を確保することはそれほど難しくないと思います。

 しかし、この試験の難しいところは、90分という割り当て時間のなかで、どうやって、得点を確保するかということにあると思います。読みながら英文を書いたり、英文の入力速度が英語ネイティブの方と同様の方には、心配が要らないことなのですが、私のような日本語で主な仕事をして、海外留学の経験もない者にとっては、英語を読む機会はあっても、それを踏まえて短時間にコメントをまとめ、一つのレポートに仕上げる訓練については、機会がありませんでした。

 時間があれば、時間内に解いてみること、さらにそれを踏まえてご自身なりの解答のプランを確立なさることをお勧めしますが、私の場合は、下記の書籍を概ね通読したところで、試験日を迎えました。

 書きたいと思うこと、試験で採点対象となっている点、高評価の分かれ目になる点については、頭の中でわかっていても、入力が追い付かなく、この科目についての不全感は消えることがありませんでしたが、最低限を抑えて、大きな書き漏れ、失点をしないことを大原則としての受験になりました。

 合格時の作業手順としては、上記の書籍のしたがった順序とペース配分を試みましたが、ペーパーレスの試験で、画面で長文の判決を読みながら、入力して整理するという作業になじんでおらず、入力時間が足りないことが判明して、どれは最低限入力すべきかという方針になりました。

 なお、合格する前の回の受験では、performance test受験の際、操作ミスで入力内容が大量に消えてしまい、復旧に不間取り、時間を大幅に取られてしまい、(現行のオンライン試験とは異なり、essay2問とperfprmance test1問で3時間30分という試験時間でした)午後の科目全体に時間配分面、精神的プレッシャー面での悪影響が生じました(落ち込みが回復できず、翌日のMBEも思い気持ちで受験することになりました)。

日本で育ったのでパソコンを使っての受験の経験が積みにくいのですが、パソコンを使っての試験ゆえの難しさを感じました。

7 essayの勉強法 その1

合格前には、上記の通り、過去問を「読む」ことと、outline読むことしかできませんでした。

もっとも、合格した試験の受験後、合格している実感がなかったので、入力訓練を兼ねて、outlineを入力してみました。1科目10頁程度に収まり、それほど時間がかかるものではなく、また、漠然理解していた部分について構造的に理解できたり、また、独特の効果的な言い回しに気が付いたりと、効果的であることを「発見」しました。自身のoutline作成の必要性については学生時代から耳にしてきましたが、結局、勉強時間がないため、また怠け者であるため、outlineはほかの方が作ったものを読まていただくことしかしてきませんでしたが、結構有効な勉強法かと思いました。 

8 科目ごとの課題

 全体の勉強時間が多く取れないので、科目ごとの違いについて大したことは述べられませんが、科目ごとに対応があると思います。

 カリフォルニア州の試験なので、カリフォルニア独自のルールについては、勉強する必要があります。2020年秋の試験ではその部分について重点的に問われたというほどではなかったのですが、回によってはCalifornia rulesを知っているかどうかを重点的に問うていて合否を分けた可能性があるとおもわれるものも多々あると思います。

Professional responsibility

 基本的にはほとんどの受験生が、MPREを合格しているので、法曹倫理の基本、事例の中での法曹倫理がどのような問題として生ずるかについては、理解があることを出発点となるため、競争するレベルがやや高めかもしれません。

事例の中から問題点を漏らさず抽出できることが最大の課題と思います。MPRE対策で充分なさっている方には必要ないかもしれませんが、私はMPREについては過去問1年分しか解かずに受験したため、この点を重視しました。(私が使って問題集は下記です。)

https://www.amazon.co.jp/Strategies-Tactics-Mpre-Professional-Responsibility/dp/1454891890

私は以前、別の専門職についての専門職倫理を教えていたこともあり、いかに現場で倫理違反ではないかのアンテナが効き、適切に倫理的に思考できること、(そしてそれを実行できること)が大切だと教えてきましたが、professional responsibility の試験もここが出発点と思います。一つの行為について複数の倫理規定が問題になったり、倫理規定どうしの関係が問題になることが頻繁にあり、それらの論点の関係性を理解しながら習得することが重要と思います。

後は、ルールをできるだけ正確に覚えること、ABAのルールとカリフォルニア・ルールの相違がある場所について(双方が期待する法曹像の違いをイメージしながら)覚えることは、点数を積み上げるのに有効です。outnine も、他の教科とは異なり、数十頁ものの少し細かめのものを読みました。

判例について

 広義のConstitutional law(Constitutional lawとCriminal procedure)については、判例の事案、結論、規範を広く浅く知っている必要があるとおもいます。この科目については、Emanuelシリーズのアウトラインを使いました。また、憲法については、日本語で読める松井先生や樋口先生の書籍にも目を通しました。

  このような勉強法については、効率的でないとお感じの方もいらっしゃると思いますが、私の場合は仕事でも人権法に関するものが一定の分量あるため、仕事にも関連しているものも多く、興味をもって臨めました。

 細かく分析していませんが、Constitutional lawとCriminal procedureについては、MBEでもessayでも、実際の事案を用いた出題が多いように感じました。

条文について

 ここは考え方が分かれるところと思いますが、法律実務に携わっている私としては、条文にあたり、横着してoutlineに頼る場合も条文から離れていないものを好みました。制定法の国ではないといえ、いくつかの分野では条文があり、また実務上認められているルールの集大成としてのrestatement が存在しているので、それに目を通したほうがよいと思います。

 憲法は全文(英語が得意でない方は和訳がでまわっているので和文ででも)一読しておくことをお勧めします。MBEは、条文を知っているだけで解ける問題がありますし、どの条文のどの文言の解釈をしているのかわかるほうが問題点を理解しやすいです。

 専門職倫理については、ABAについては全文、Cal rulesについては必要な都度、該当箇所を確認し、2018年改正箇所についてはいくつかの記事を読みました。Model Rules of Professional Conduct and Other Selected Standards, 2020 Edition (Selected Statutes) Thomas D. Morgan 著を利用していました。完全対訳 ABA法律家職務模範規則藤倉 皓一郎, 日本弁護士連合会著も、かなり以前の内容であり、その後の改正に対応していませんが、和文のほうが速く読める方には有益と思います。また、『第4版 アメリカの法曹倫理 事例解説』LEGAL ETHICS IN A NUTSHELL Fourth Edition (ロナルド・D・ロタンダ 著, 当山 尚幸 訳, 武田 昌則 訳, 石田 京子 訳)も日本語で読むことができる有益な書籍です。また、通読はしていませんが、こまったらABAが出版しているannotationも参照しました。


証拠法についても連邦証拠規則は読んでおくとよいと思います。証拠法についても条文を知っていればよい問題もMBEではよく見かけます。田邉 真敏先生のアメリカ連邦証拠規則 (広島修道大学学術選書 55) も改正前のものですが、日本語で読めるものとして貴重と思います。

連邦民事訴訟規則については、下記の規則集を入手して、必要な個所やoutlineが理解しにくいところは条文にあたりました(全文は読む余裕がありませんでした)。Amazon | Federal Rules of Civil Procedure; 2021 Edition: With Statutory Supplement | Michigan Legal Publishing Ltd. | Law和文では、改正前ですが、アメリカ連邦民事訴訟規則―英和対訳渡辺 惺之, 吉川 英一郎 著があるようですが、目を通す余裕がありませんでした。

契約法については必要に応じてSelections for Contracts, 2019 Edition (Selected Statutes)

E. Allan FarnsworthCarol Sange他を参照しました。

不法行為法、刑法、財産法、企業法については、原則として、条文を見る機会がほとんどありませんでした。

 

9  論点抽出

 professional responsibility, Evidence law, Contractsについては論点のv拾い漏れをしやすく、それが致命的であることが多いので、論点抽出を重視しました。

 これらに限らず、どうしてその論点が登場するのか、登場する論点間のつながりについては、意識して勉強しました。例えばjoinder rule の次にSMJとしてsupplemental jurisdictionを含む検討が必要であったり、omitted childの次にabatmentの検討が必要となる等、科目内のつながりもありますが、カリフォルニアの試験の場合の特徴として、科目間の論点の関連が重視されていることもあります。outlineでは科目ごとに分かれていますが、科目間のつながりがある論点もその点の意識も必要ですし、5科目の出題しかできない試験体制の下では、科目横断的な論点については出題する誘惑が働きやすいように思います。

 証拠法は、日本で刑事訴訟法をしっかり勉強した人には理解はしやすいと思います。私がポイントと考えているのは、essayでは、非常に多くの論点を含む問題が出題されるので、要領よく加点を狙えるよう、最低限外さない論点を抑えることが重要と思います。(広義のopposing )party admissionは落としやすい論点なので、感覚として身に着けることをお勧めします。そのほか、(聞き手への影響を示す証拠などの)伝聞証拠に該当しない証拠や、弾劾証拠として用いる場合の課題についても簡潔に書けるようにしておくとよいです。証拠法はessayではカリフォルニア法が出題されることもしばしばありますので、その相違が記載されているoutlineを使うことをお勧めします。

 家財法関係は、カリフォルニア法に慣れる必要があります。法の原則と例外そその要件を抑えることはどの分野にも共通ですが、community property 法では、推定規定についても、推定規定であることとその要件について、理解して記載できるようにしておくとよいと思います。

 契約法のStatute of Fraudsの分野はもちろんのこと、書面化(in writing)が効力発生要件となっているもの制度も多く、日本実務しか体験していない方には落としがちな論点ですので、(問題文で会話がなされている場合には、その後に書面は作成されたかを探す癖をつけました)、私は、outlineを読むときに、書面化(in writing)の部分には、マーカーで目立つようにハイライトしていました。

 

10 得点分布等の分析

 Percentile Table (ca.gov)82